研究課題/領域番号 |
24310027
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中山 幹康 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (10217945)
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研究分担者 |
堀田 昌英 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (50332573)
坂本 麻衣子 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (50431474)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際河川 / 環境影響評価 / 意思決定支援システム / 情報の透明性 / メコン川 / 国際情報交換 / ラオス / ベトナム |
研究概要 |
「情報の透明性」に関して,先進国および開発途上国が共有する流域協議機関が保持する制度的枠組に関する文献調査を実施した. 開発途上国が共有する流域協議機関で「情報の透明性」を担保する為の制度的枠組のあり方への参考事例として,ドナウ川およびメコン川での実情について,ICPDR(在ウィーン,オーストリア)およびメコン川委員会(在ビエンチャン,ラオス)にてヒアリングを行った.また,アジア開発銀行,国際協力機構(JICA)などの国際機関関係者からもヒアリングを実施した.ラオスの政府機関に於いてもヒアリングを行った. メコン川下流国からの専門家および流域外の地域からの有識者を招聘して,第二回専門家会合(2013年9月)および第三回の専門家会合(2014年2月)を何れも東京で開催した.メコン川本流におけるサヤブリ・ダム建設計画を対象事例として,「意思決定支援システム」が備えるべき要件について討議を行った. アムダリヤ川(中央アジア)のログン・ダム建設計画を巡るタジキスタンとウズベキスタンの確執を対象事例として,「情報の透明性」と「政策の対称性」の関係について内政と外政の観点から解析し,後者が充足されないが故に前者が実現し得ないことが判明した.更に,当該流域での流域国間の交渉を促進するための提言を取り纏めた.同様な解析をアイスランドから英国への送電事例について,アイスランドに於ける内政と外政の観点から解析した.政府による「情報の透明性」の欠如が国内での資源からの利益の配分に及ぼす影響については,東ティモールを事例とした解析を実施した. 第二回および第三回の専門家会合での討議を踏まえて,「意思決定支援システム」構築の進捗とその設計の方向性について,研究代表者がメコン川流域国の専門家に戸別に意見を聴取した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献調査,流域協議機関,国際機関でのヒアリング,専門家および学識経験者からヒアリングは計画通りに進捗した. 第二回および第三回での専門家会合が当初の想定通りに開催され,流域国からの専門家および流域外からの研究者により,研究成果とこれからの研究計画に関する討議が行われた. 当初は想定していなかった進捗として,アムダリヤ川流域での事例研究を実施した結果として,「情報の透明性」に加えて「政策の対称性」の重要性が明らかになると共に,両者の関係について解析が進んだ.また,「情報の透明性」の欠如が国内で及ぼす影響について,東ティモールを事例として解析した.
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今後の研究の推進方策 |
先進国が共有する流域協議機関にて,これらの機関が有している「情報の透明性」のための制度的枠組と,その有効性について更にヒアリングを行う.また,「情報の透明性」と「政策の対称性」の関係についても事例からの分析を進める. メコン川下流域からの専門家からの意見を踏まえて,メコン川下流域で適用可能な「情報の透明性」と「政策の対称性」を促進するため制度的枠組の提案を,更に精緻化する. また「意思決定支援システム」に「政策の対称性」を取り込むための方法論について,考察を進める.「政策の対称性」を要素として含む「意思決定支援システム」を実際に流域国の実務者により広く使われるような仕組みとするための助言を,流域国からの専門家およびに流域外の地域に在住する有識者より得る.
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