研究課題/領域番号 |
24310032
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
藤田 陽子 琉球大学, 国際沖縄研究所, 教授 (70315456)
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研究分担者 |
我部 政明 琉球大学, 法文学部, 教授 (60175297)
前門 晃 琉球大学, 法文学部, 教授 (60190287)
桜井 国俊 沖縄大学, 人文学部, 教授 (50251343)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境と社会 / 米軍海外駐留基地 / 社会・経済的影響 / 環境影響評価 |
研究概要 |
本年度は、基地環境問題に関する沖縄との比較研究を行うため韓国を訪問し、現地視察やヒアリング調査を行った。その結果、基地運用に伴って発生した環境汚染に対する費用負担責任の所在等を定める地位協定の内容や、跡地利用に際しての土地所有の形態などに重要な違いがあることが判明した。 また、各研究代表者・分担者はそれぞれの専門的立場からの研究を推進した。国際政治学の分野では、東アジアにおける米軍基地から環境への悪影響をもたらした事例についての文献調査・収集を行い、米軍が環境汚染についての調査と評価を行っていたことがわかった。調査を行う背景については、政治的、軍事的、技術的理由あるいは環境破壊にともなう補償などがあったと考えられるが、現時点では不明のままである。環境アセスメントの視点からは、2012年9月と2013年3月に韓国実地調査を実施し、基地建設時における環境影響評価法の適用実態、韓米地位協定の環境付属条項の運用実態(特に返還米軍基地の跡地浄化の実態)、枯葉剤問題の解明状況の3点を軸に情報収集を行った。 沖縄(日本)、韓国の米軍基地環境問題の対比を通じて、更に掘り下げるべき論点を絞り込んだ。自然地理分野では、国立国会図書館憲政資料室所蔵のUSCAR文書から戦後沖縄の米軍基地建設の際に、どこから、どのような資材を、どれだけ調達し、それがその場所の環境にどのような影響を及ぼすのかをまとめた資料があるかを調べた結果、ほとんどそのような資料が憲政資料室には所蔵されていないことが分かった。環境経済学分野では、基礎調査として沖縄・韓国における米軍基地由来の環境問題、とりわけ土壌汚染および航空機騒音が地域の経済活動にもたらす影響について文献調査およびヒアリング調査を行い、返還後の汚染発覚に伴う開発遅延等に加えて、基地運用中の汚染に関する情報の非対称性がもたらす損失についても検討すべきであると認識するに至った。 また、12月には本課題の研究協力者である米国環境法の専門家、スーザン・スミス博士を迎えてのワークショップでは、米国の環境関連法の海外基地周辺地域への適用可能性について知見の共有を図り、意見交換を行った。スミス博士は、海外駐留基地による周辺地域への環境影響に対してNEPA(国家環境政策法)等の米国環境法を適用することは、理論上非常に困難であることを述べた上で、解決策として訴訟等の方策が残されていることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた韓国現地調査を無事に実施し、米国の研究協力者との交流も沖縄でのワークショップという形で実現するなど、ほぼ計画どおりに進んでいる。沖縄以外の国内の米軍基地に関する調査に着手できなかったため、次年度以降に実施する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の計画どおり、ハワイ・米国本土・沖縄県以外の国内における基地環境問題の現地調査を行うと共に、在米の研究協力者との研究交流を継続し、研究代表者・分担者の各専門分野からの研究を推進しつつ、ワークショップ等の研究集会を通して知見の共有を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究者間の日程調整がつかず、本年度中に沖縄以外の国内米軍基地の現地調査を実施することができなかったため、これに関わる調査・研究を次年度に実施することとする。
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