研究概要 |
1.データベースの収集:植生土壌などの点データ,衛星画像などの面的データ,畜産経済などの統計データなど既存のデータソースを収集し、1つのデータベースで管理できるように形態,空間精度,時間精度で分類し,GISで管理できるデータベースをPostGISによって開発した。全国329の町村を対象に開発したが,植生土壌の点データの範囲が現状では限られていたため、全種類のデータをカバーできたのはそのうち120となった。Webベースで設計し、携帯電話の接続がリアルタイムに応える準備を整えた。2.脆弱性の評価:当初想定されていた脆弱性指標(脆弱性指数=生態的脆弱性指数+経済的脆弱性指数)による脆弱性の評価よりもより気候変動の影響を直接捉えた、ゾド影響の線形重回帰モデルを作成した。Altanbagana et al.(2010)による脆弱性指標はゾドの起こりやすさを示すZud指数、家畜による遊牧地の被食量の強度の指標、貧困度の指標から構成されていたが、本研究ではZud指数、遊牧地におけるヤギ・ヒツジの夏季牧草量、ヤギ・ヒツジ頭数の3変数から構成した。この既存研究では県レベルでの評価にとどまったが、本研究では1.のデータベースによって町村レベルで計算できるようになった。また、環境容量をTserendash(2006)の方法に従い,MODISを用いて算出した牧草量と放牧家畜の被食量の商で算定する方法を検討し、モンゴル全域を各年でカバーできることがわかった。3.シミュレータの設計:半乾燥地域の放牧地における政策と畜産経済,草地生態系への影響などを総合的にシミュレーションできるDerry(1998,2009)のSimSAGS改良に向けたソムごとに実施できる政策手段と,それに適するCAPの設定を試みた。政策手段は現地での遊牧民および町村の行政長に対するインタビューによって、現地で実行可能な方法を調査した。その結果、先行売却、放牧地域の移動、柵設置による冬期飼料の準備が現地での受け入れ可能な適応方策であることがわかった。また、これらの方策は地域によって実現可能な地域と不可な地域があり、例えば南モンゴルのOmnogobi県では植物生産力が低く、また鉱業の拡大によって柵設置による準備が難しい町村があり、移動や売却に絞られることがわかった。4.社会実験の準備:遊牧民の経営と生活の実態について調査を行う。また、代表的ソムとしてGobi-Altai県のBigerソムを選定し,遊牧民向けに研究の内容,意義を説明し,研究協力をしていただくことになった。また、早期適応指示は携帯電話を通じて行うため,Bigerソムで利用可能な現地モバイル会社2社を対象に技術開発と利用について現地モバイル会社に協力を要請する手はずを整えた。
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