研究課題/領域番号 |
24310034
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
厳 網林 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (10255573)
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研究分担者 |
丹治 三則 慶應義塾大学, 環境情報学部, 講師 (90397711)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | モンゴル / 気候変動適応 / 情報共有 / SMS / ゾド |
研究実績の概要 |
モンゴルは気候変動に影響されやすい国として国際的関心が高い。1990 年代以降の経済自由化により家畜頭数が急増し,深刻な過放牧状態が続いている。またZud などの異常気象が頻発し家畜の大量死をもたらしている。気候変動リスクを低減するためには経済利益を優先する遊牧家庭と自治体の行動を規範し,現場に早期適応指示が届く仕組みが求められている。本研究は草原の環境容量のもとで遊牧民の適応行動を調査・設計し,マルチエージェントの手法で遊牧民の適応行動を分析するシミュレータを開発し, 携帯電話によって遊牧民に早期出荷情報を送り,社会実験によってシステムの有用性を検証することを目的としている。その中でノルウェー気象研究所、およびTexas A&M Universityから提供される気象、牧草量データを携帯電話で送信する仕組みと、携帯電話を通じて得た遊牧民からの返信を再送信して遊牧民同士で共有する仕組みを開発した。平成25年度からGobi-Altai Aimag、Bigger Soemに住む3000人のうち、MobiComのユーザ(約1000人)に160文字のショートメッセージを送信し、天気予報より精度・鮮度の高い情報を送った。住民からの反応はよくて、Gobi-Altai Aimagの要望を受けて、H26年度にはGobi-Altai Aimagの他7つのSoemにおいてデモを行い、実験拡大の準備を整った。さらにモンゴル全土7つの地域に対して遠隔会議を開催し、本システムの概要を説明した。これより科学研究のデータを現場に送るインタフェースを確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通りに研究を進めてきた。初年度は研究環境を構築し、データベースの構築を行った。2年目はこのデータベースを用いて気候変動による各地の大量死亡(ゾド)のメカニズムを解析し、地理的、空間的、政策的要因が絡んでいることを明らかにした。同時にこのような科学のデータと知識をどのようにその情報がもっとも必要である遊牧民に届けるかに着目し、携帯ショートメッセージによる送信の仕組みを開発した。3年目にこの仕組みをGobi-Altai Aimag、Bigger Soemで社会実験を行い、良好な反応を得たため、Gobi-Altai Aimagの他のSoem、モンゴルの他の省において利用要望があり、対面または遠隔説明会を開いた。ここまで社会的反響を得たことは予想以上であり、研究成果は社会にすぐに活用されたことは大変よかった。
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今後の研究の推進方策 |
この社会実験の継続体制を構築し、確立する。国立発展研究所と技術提携のMoUを結んだ。そこを中心に気象局、NPO、地方政府による持続可能な運用体制を構築する。また、ここまでの研究成果を科学論文にすることに力を注ぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
大場章弘氏の人件費をH26年度上半期の当該研究費より支出をし、下半期もその一部を支出する予定だったが、不要となったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究推進のために、現地モンゴルへ行く為の旅費に充当予定。
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