平成27年度は次の3つを計画し、それぞれ次のような結果を得た。1つ目は、Gobi-Altai Aimagにおける社会実験の効果測定として、アンケート、電話インタビュー、対面インタビューを実施し、既存システムの機能性及び社会効果を測定した。これらの社会調査の結果、携帯端末に送付される情報を元に実際に遊牧ルートを変更した遊牧民が39%(N=156)、牧草準備の適切な場所を判断して越冬準備した遊牧民が25%、普段コミュニケーションをとることのない人と情報共有した遊牧民が84%といったゾド適応に向けた行動変化が多く報告され、本策の有効性を実証した。2つ目は定常サービスのためのサーバ構築・携帯電話対応機能の改善として、モンゴル国立発展研究所と提携し、研究所にてサーバを構築し、本事業が行ってきたサービスを現地機関へ移行することを検討した。その後モンゴル国立発展研究所が急遽統廃合されるなどの動きがあり、実施は見送った。3つ目に、モンゴルの他地域への社会実験の拡大として、現地気象サービス機関と提携して、携帯による情報送信サービスを他の地域に広げた。拡大に先立ち、Mercy Corpモンゴル支部とモンゴル国立発展研究所の協力のもとモンゴル全域にかかる69ソムを対象としたワークショップを実施した結果、92%(N=168)の意思決定に係る参加者が自分の地域での導入に前向きであることが明らかになった。そのうち実験が可能な対象地域を上記2機関と検討した結果、Arkhangai、Bayankhongor、Bayan-Ulgii、Dundgobi、Gobi-Altai、Hovd、Ovorkhangai、Sukhbaatar、Uvs、Zavkhan Aimagから一つずつ計10のソムを対象に、Mercy Corpモンゴル支部の協力の元システムを実装した。計画当初では社会効果を評価する予定していたが、上記の国立機関の統廃合などによって実装プロセスが長引いたため、年度内での社会調査を実施することに至らず、今後の課題として残した。
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