研究実績の概要 |
紫外線のゲノム毒性に対する皮膚組織レベルの防衛応答である変異誘発抑制(mutation induction suppression, MIS)応答の機構を解明するため、アポトーシスに基づく組織交代修復モデルを立て、それに基づきDNA損傷生成・突然変異誘発・アポトーシス発動の指標を用いて分子生物学的・遺伝学的・組織学的解析を行った。 MIS応答を規定する原因DNA損傷を同定するため、基礎生物学研究所の単波長紫外線照射装置大型スペクトログラフを用いて、紫外線で生成するDNA損傷であるシクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)、6-4光産物(64PP)、Dewar異性体の生成について紫外線波長間の相互作用を解析し、MIS応答の波長依存性との関係を調べた。短波長側で64PPとMIS応答発動に相関が見られたが、64PPをDewar異性体に変換してもMIS応答に変化が見られなかったことから、64PPだけでなくDewar異性体もMIS応答に関与している可能性が示唆された。 また組織学的方法によりMIS応答に伴うアポトーシス誘導を解析し、MIS誘発最小線量以上で特異的に表皮全体のアポトーシスが紫外線照射後36時間前後に誘発されることを認めた。 一方、DNA修復欠損による皮膚病態とMIS応答異常との関連性の遺伝的解析については、Xpa欠損マウスに加え、ヌクレオチド除去修復のうち転写共役修復に欠損のあるErcc6欠損マウスでも著しいMIS応答の亢進が見られることを明らかにし、MIS応答に転写共役修復系が関与していることを示唆した。 本研究の成果として、突然変異の作用スペクトルを詳細に解析したデータから明らかにしたMIS応答の波長依存性を国際学会で発表した。またXpv欠損マウスの突然変異応答について学術論文に発表した。
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