研究課題
本課題は、Nbs1やKu70がそれぞれ制御する2つのDNA二重鎖切断(DSB)修復系路(相同組換え:HRと非相同末端結合:NHEJ)を中心に、放射線被ばくによって引き起こされたDSBの修復過程と突然変異や遺伝的不安定性の誘導を直接的に関連づけて解析可能にすることを目的としている。その目的を達成するために、分子生物学・細胞工学的手法を用いて、内在ゲノムDNAへの時間・部位特異的なDSB導入による新規の突然変異実験系を樹立し、細胞周期進行などに伴うDSB修復機構の変化から、突然変異の頻度やスペクトルまでを包括的に解析することを具体的計画としている。平成25年度は、内在ゲノムを標的とする新たな部位特異的DNA二重鎖切断による突然変異実験系の樹立を進めたが、十分なタンパク発現をする細胞が得られなかったため、最終的に有効な細胞系の樹立には至っていない。そのため、あらたな酵素系での検討にとりかかった。本課題の主要な細胞系である時間・部位特異的DSBによる相同組換え修復系についても論文の受理には至っていないので、データを追加する作業を続けている。一方で、NBS1タンパク質の機能制御部位と放射線感受性ならびに突然変異との関係の解析については、論文を国際学術雑誌に公表することができた。また、DSB修復機構の中心となる制御タンパクNbs1とKu70をダブルノックアウトした細胞の解析についてもコメット解析での確認を残すところまできている。
3: やや遅れている
本課題の主要な部分である、時間・部位特異的DSBによる相同組換え修復系について論文公表に至っていないことや、内在ゲノムの部位特異的切断計において細胞株の樹立が完了していないなど若干の遅れがある。その一方で、NBS1タンパク質の機能制御部位と放射線感受性ならびに突然変異との関係を解析した新たな知見を国際学術論文として公表することができた。これらを合わせて判断すると、若干の遅れがあるものの、最終年度までに当初目標には到達できるものと考えている。
内在ゲノムDNAに対する部位特異的損傷導入系については、ベクターの改変を加速する必要がある。この点については、新たな制御因子を導入するなどの方策に着手している。このような新たな方策の導入によって、期間中に実験系の樹立までたどり着きたいと考えている。
試薬価格の変動等で若干の差額が生じたため。消費税上昇もあるので、次年度の計画に従って購入する際の差額に充てる。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of Cell Science
巻: 127 ページ: 763-772
10.1242/jcs.135855
Journal of Radiation Research
巻: 55 ページ: 未定
10.1093/jrr/rru011
http://tauchilab.sci.ibaraki.ac.jp