研究課題/領域番号 |
24310041
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 純也 京都大学, 放射線生物研究センター, 准教授 (30301302)
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研究分担者 |
奥井 理予 桐蔭横浜大学, 先端医用工学センター, 講師 (20327654)
林 幾江 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (00346503)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゲノム安定性 / nucleolin / クロマチン / DNA損傷 / DNA修復 |
研究概要 |
核小体タンパク質nucleolinはリボソーマルRNA合成、核小体形成に機能することが知られているが、近年DNA複製、'DNA修復にも機能しうることが示唆されている。また、nucleolinは多くの癌細胞では高発現しており、ゲノム安定性に寄与する可能性が考えられる。それ故、本研究では、nucleolinがDNA二重鎖切断修復や紫外線DNA損傷修復などによるDNA修復応答における機能を解明し、ゲノム安定性の維持、がん化への寄与を明らかにすることを目的とする。平成24年度ではDNAノックダウン細胞の作製及び、種々のDNA損傷に対する細胞応答機構への関与について明らかにすることを目的として、研究を行った。 Nucleolinはリボソームの機能に関わる生存に必須な遺伝子のため、遺伝子ノックアウトした細胞を作製することは困難なので、テトラサイクリンでnucleolin shRNAを誘導できるプラスミドを293細胞に導入し、テトラサイクリン添加により、nucleolinを発現抑制できる細胞系を最初に確立した。γ線照射によりゲノムDNAに二重鎖切断(DSB)損傷が発生すると、ATMキナーゼに依存したリン酸化が誘導されるので、作製した細胞、およびsiRNAノックダウン細胞で検討すると、ノックダウン細胞ではATMのリン酸化、およびATM基質、p53, SMC1, CHK2, γH2AXのリン酸化が低下していた。紫外線あるいはカンプトテシン(抗癌剤の一種:トポイソメラーゼ1阻害剤)はDNA複製フォークの進行を阻害し(複製ストレス)、二次的にDSBを生成し、その際にATM経路の活性化が見られるが、この場合でもnucleolinノックダウン細胞では、ATM依存的なリン酸化が低下していた。しかし、複製フォーク阻害時に活性化するATRキナーゼ経路については増強しており、複製フォークの安定性に機能することが考えられる。このようにnucleolinは放射線によるDSB損傷と複製ストレス損傷の両方において、DNA損傷応答、ゲノムの安定性維持に機能すると考えられるので、平成24年度開発したDNA損傷・mutationモニタリングシステムを用いて、nucleolinおよび、複合体パートナー因子の機能の詳細をさらに明らかにすることにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とする遺伝子の機能解析ではノックアウト、ノックダウン細胞の作製が必要であるが、平成24年度研究でnucleolinノックダウン細胞の作製に成功し、それらの細胞を用いて、計画していたDNA損傷応答に関する解析を順調に遂行できており、平成24年度研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度解析からnucleohnのDNA損傷応答に関する機能が明らかにされたので、損傷タイプによる機能の違いをさらに解明する。nucleolinはタンパク質複合体を形成することが知られるので、DNA損傷応答に関与する構成因子を同定し、それら因子それぞれのDNA損傷応答における機能を解析していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度研究では困難が予想されたshRNAノックダウン細胞の作製がスムーズに進行して、その後の解析も順調に行えたため、当該金額が生じた。本年度はnucleolinの詳細な機能の解明において、形成する複合体の構成因子をプロテオミクス解析で同定するのに多額の費用が予想されるため、その解析費用に充当することにしている。
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