研究課題
基盤研究(B)
放射線防護基準は公衆に対して一律に定められているが、放射線感受性には個人差があり、将来的には個々人の感受性に応じて放射線防護基準を設定することも可能であると思われる。本申請研究は、このような次世代の放射線防護体系の確立に向けて、日本人の放射線感受性の個人差を規定するSNPの同定を目指しており、放射線リスクコミュニケーションを構築する上で重要な分子基盤を提供する。本年度は、微小核アッセイ法の検出感度等に関して、放射線高感受性遺伝病患者および家系構成員のEB株化リンパ球を用いて検討した。具体的には、株化リンパ球をRPMI1640培地で培養し、5,000個/100μ1の細胞を96ウェルプレートに分注した。細胞に0.5Gyまたは1Gyのガンマ線を照射後、サイトカラシンBを培地に4.5μg/mlの濃度で添加して28時間処理した。細胞をエタノールで固定して、Hoechst33342で核を、FITCで細胞全体を染色した。2核細胞中の微小核数をIn Cell Analyzer 2600で計測した。放射線高感受性遺伝病の患者細胞は、放射線線量に伴って微小核数が著明に増大した。一方、保因者である両親または患者同胞の細胞は、微小核数が正常と患者の中間値を示した。微小核アッセイ法は、疾患保因者の放射線感受性をも検出できる高感度の検査法であることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
細胞の放射線感受性のアッセイに微小核法が有用であることを確認できた。これによりおおむね順調に進展していると考えられる。
微小核アッセイ法は放射線感受性を高感度に検出できるが、放射線非照射でのバックグランドが高いという欠点がある。今後、バックグランドを低減させる改良法について検討する。
微小核法の改良を優先させたため、初年度は正常ヒトリンパ球ライブラリーの購入と検定を行わなかった。次年度に、正常リンパ球について検討する。
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