研究課題/領域番号 |
24310046
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田渕 圭章 富山大学, 生命科学先端研究センター, 准教授 (20322109)
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研究分担者 |
星 信彦 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10209223)
近藤 隆 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (40143937)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 内分泌かく乱物質 / 複合影響 |
研究実績の概要 |
環境化学物質の複合影響を「細胞ストレス保護システムに対する作用」として捉えることができるか否かを目標として研究を行っている.今年度は,この研究の一環として,以下の実験成績を得た. 以前に我々が樹立した不死化ラット口腔上皮細胞ROE2において,フッ化ナトリウム (NaF) がアポトーシスを誘導し,また同時に小胞体ストレス(ERストレス)が惹起された.RNAi法を用いてERストレスマーカー遺伝子であるDDIT3やHSPA5をノックダウンした時,細胞死の誘導率が変化したので,これらの遺伝子が本細胞死に密接に関与することが示された.さらに,ヒト口腔がん細胞株HSC-3細胞において,これらの遺伝子がNaFによるアポトーシス誘導に少なくとも一部関与していることを確認した.ROE2やHSC-3細胞を用いて,DDIT3やHSPA5を指標にして環境化学物質の複合影響を検討した.NaF,ビスフェノールAとフタル酸化合物の同時添加は,少なくとも相加的な効果があることが明らかとなった.現在,ERストレスに関連する転写因子ATF6の応答配列 (ATF6 RE)の下流にレポーター遺伝子を結合させた遺伝子を用いて,より感度が高いERストレス応答細胞系を構築しているところである. 海水魚メジナのウロコを骨モデルとして用いて,骨代謝におよぼす水銀の影響を調べた.メチル水銀と無機水銀は,ともに骨芽細胞や破骨細胞に毒性作用があることが明らかとなった.また,メチル水銀の方が無機水銀よりも毒性が強く,短時間の培養で骨芽細胞よりも破骨細胞に影響を与えることが判った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞モデルにおいて,環境化学物質の複合影響,NaF,ビスフェノールAとフタル酸化合物の同時添加の場合,少なくとも相加的な効果があることを明らかにできた.また,ウロコモデルにおいて,メチル水銀と無機水銀は,ともに骨芽細胞や破骨細胞に毒性作用があることを明らかにした. 以上の結果が得られたことから,おおむね順調に進んでいると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
間葉系幹細胞,軟骨細胞や骨芽細胞に対して環境化学物質の複合影響を検討する.ERストレスは,BipやERストレスセンサーであるPERK,ATF6とIRE1発現をmRNAとタンパク質レベルで評価する.オートファジーは,LC3-Ⅱ/LC3-Ⅰの比などを用いて評価する. 動物レベルで環境化学物質の影響を検討するときは,妊娠マウスやストレス負荷マウスに対してダイオキシンやネオニコチノイド等を投与し,形態学的な評価とストレス保護システム異常の観点から評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
資金を効率よく,必要最小限の使用に留めたので次年度の繰越金が生じた.特に,網羅的な遺伝子発現解析に使用する資金が予定よりも少なく,これが主な原因と考えられる.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度,研究を実施するために,以下の使用を予定している.試薬類:700千円,培養器具類:300千円,抗体類:420千円,遺伝子発現解析試薬類:2000千円,旅費:200千円,謝金:100千円,その他(論文投稿料):200千円.
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