研究課題
1. 北日本および沖縄諸島のサメ類、鯨類に残留する天然臭素化合物はメトキシPBDE(MeO-PBDE)およびメチル化ビピロール(Br4Cl2-DBP)であり、それらの脱メチル化体は1/100以下の濃度であった。魚介類(タラ)においてもOH-PBDEまたはビピロールの体内取り込みは微量であった。体内におけるOH-PBDEは微生物によりO-メチル化が進行するものと推測される。2. ヒトが摂取する食事(陰膳方式)からOH-PBDEとMeO-PBDEがぼぼ同量で検出されたが、ヒトの血液中にはOH体のみが、母乳にはMeO体のみが検出され、両者の体内挙動に違いがみられた。3. MeO体からOH体への体内変換を調べるために、天然で検出される臭素化ベラトロール(dimethoxy体)についてラットおよびヒト肝ミクロゾームによるin vitro代謝試験を行った。diMeO体は容易に脱モノメチル化(グアヤコール)が起こるが、脱ジメチル化(カテコール)は起こりにくいことがわかった。天然由来の2,2’-dimethoxy-3,3’,5,5’-tetrabromobiphenylについてin vitro代謝反応でも容易に脱モノメチル化が進行した。4. 海藻成分である臭素化グアヤコールおよびカテコールの抗酸化能をDPPH法およびおβカロテン脱色法で評価した結果、テトラブロモカテコールがトロロックスと同程度の抗酸化能を有した。以上、天然のMeO-PBDEは体内で代謝活性化が起こり、抗菌、抗酸化の機能性を増すことが分かった。
3: やや遅れている
天然のフェノール性臭素化合物の内分泌かく乱性試験についてスクリーニングを行う計画が化学合成品の供給が遅れているため、未着手である。その他の計画は概ね順調である。
1. ヒト体内におけるフェノール性ハロゲン化合物の挙動を調べるため、血液-尿のペアサンプル(京都大学ヒト由来試料バンクに保管済み)を用いてOH-PBDEおよびMeO-PBDEの濃度をGC/MSにて計測する。同時に、類似構造をもつトリクロサン(抗菌剤)の挙動を同サンプルで追跡し、OH体およびMeO体の体内変化について比較検討する。また、マウスを用いたOH体の血中濃度と抗酸化能との関連性に関する基礎データを作成する。2. マウスへMeO-PBDE投与し代謝(脱メチル化)反応を調べる。血中のOH-PBDE濃度の計時変化を調べ、抗酸化能との関連性を明らかにし、代謝活性化によって起こる抗酸化、抗炎症の機能性を評価する。
当初予定していた代謝実験および内分泌かく乱性試験が標準投与物質の化学合成が不十分であったためできなかった。次年度に試薬などを購入して再度合成してから試験することになった。フェノール性臭素化合物の内分泌かく乱性試験を行うための化学合成に関する費用および抗菌、抗酸化および抗炎症作用を調べる試薬および細胞培養試薬に当てる。
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