研究課題
基盤研究(B)
本研究では、エストロゲン刺激に伴って細胞内で進むゲノミック経路とは異なる新たなエストロゲン応答カスケードによるシグナル伝達について、small G-proteinの関与を明らかにするとともに、それらが関与する細胞増殖や細胞運動などが関わる生理機能や性分化などを指標にして新規カスケードを明らかにすることを目標にする。さらに、そのようなエストロゲン様応答をする化合物を明らかにすることでエストロゲン製剤や機能性食品などへの応用の可能性を検討する。特に、すでに我々が明らかにしたエストロゲン様活性を有するが細胞増殖能は持たない「サイレントエストロゲン」に属する化合物を明らかにするとともにその利用法を探る。本年度の成果は、(1)エストロゲン様化学物質による遺伝子発現プロファイル解析により新しいエストロゲンシグナルカスケードの存在が明らかにして報告を行った。また、(2)新規シグナル伝達カスケードに関する検証を行い、細胞運動に関わるRacなどのsmall G-proteinの関与が明らかになった。また、連携研究者との共同研究により、(3)ラット脳の分化におけるエストロゲン応答細胞運動関連シグナルカスケードの解析を進めて、アクチン重合反応を制御するcofilinの関与を明らかにして、論文発表を行った。今後は、(4)新規シグナル伝達カスケードに関する天然物由来化合物を用いた検証により、(1)~(3)で得られた基本的なシグナルカスケードに関する情報をさらに複雑な刺激(特に複数の刺激が同時に起る場合)の解析に対して応用が可能かを検討することでエストロゲン製剤や機能性食品などへの応用の可能性を検討する。
2: おおむね順調に進展している
当初計画した解析を問題なく進めることができ、結果もほぼ計画通りに得られ、また、成果の発表もほぼ計画通りに進んでいるため。
平成24年度に行った、(1)エストロゲン様化学物質による遺伝子発現ブロファイル解析は平成25年度も継続するが、特に混合物に関してプロファイルを取得し、単体化合物との比較から細胞機能への影響予測を行う。さらに、(2)新規シグナル伝達カスケードに関する検証を行う。また、(3)ラット脳の分化におけるエストロゲン応答細胞運動関連シグナルカスケードの解析により、細胞運動と細胞死に関係するタンパク質に注目して解析を行う。本研究は、日本医科大学と連携して進める。なお、(1)と(2)は本年度で終了するが、(4)新規シグナル伝達カスケードに関する天然物由来化合物を用いた検証の項で発展的に継続する。
エストロゲン様化合物の影響評価のために遺伝子発現解析のための細胞培養試薬やRNA及びタンパク質解析用試薬などの試薬・消耗品費、シグナル伝達カスケード解析用試薬とその実験を行う研究補助員雇用費を計上する。また、成果発表のために学会発表に関わる旅費、また、論文発表に必要な英文添削費用(外注費)と論文別刷り費用を計上する。
すべて 2013 2012
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