研究概要 |
本年度は、生分解性キレート剤として、アスパラギン酸系キレート剤のS,S-エチレンジアミン二コハク酸、3-ヒドロキシー2,2'-イミノジコハク酸、イミノジコハク酸、及び、グルタミン酸系キレート剤のレグルタミン酸二酢酸、メチルグリシン系キレート剤のメチルグリシン二酢酸を用いて、キレート溶液による土壌洗浄試験を実施した。試料には、重金属を含むモデル汚染土壌、及び、実際のフィールドから採取した汚染土壌を適用した。その結果、キレート溶液による土壌洗浄は、水洗浄と比較して、弱酸性及びアルカリ性領域において著しく洗浄効果が高くなることが分かった。 土壌洗浄における生分解性キレート剤による重金属の抽出挙動を説明するために、洗浄液に配合したキレート剤の各金属イオンに対する錯生成定数を滴定法によって求めた。得られた錯生成定数、反応速度定数、溶解度に基づいて化学平衡計算ソフトウェア(MINEQL、MINTEQA2)を利用して定量的に解析し、土壌からの金属抽出モデルを構築した。また、逐次抽出に基づく化学的分画法により、洗浄処理前後における土壌中のAs, Pb, Cd, Cr(VI), Seを交換可能画分、炭酸塩画分、金属酸化物画分、有機物画分、アルミノケイ酸画分に分画し、キレート溶液による洗浄効果を評価した。更に、重金属汚染土壌の国際標準試料BCR-700に対して本研究で最適化した生分解性キレート剤洗浄溶液を適用し、本法による土壌洗浄効果は、EDTA等のキレート剤を用いて従来報告されてきた洗浄率と同等であることを明らかにした。 洗浄後に残留する生分解性キレート剤の環境毒性を評価するために、イネ等に対する環境影響評価試験を実施した。また、キレート洗浄液中における有害金属回収に関しては、固相抽出に大環状物質を多層的に修飾した超分子型固相抽出材を用いることにより、大過剰のEDTA共存下においてもAs, Pb, Cd, Cr(VI), Seを定量的に回収できる分離法を確立した。
|