本研究は、水生植物の根圏における植物と微生物の共生・相互作用が発揮する新しい現象、能力と効果を分子レベルで解明するとともに、その作用効果を最大限発揮させることによって、個々の植物と微生物では不可能であった機能を有する植物-微生物共生系を創出することを目的とし、特に、その共生系を利用した効率的な窒素・リン除去と有機化学物質除去技術を開発することを目指している。 平成26年度では、ウキクサ科植物と植物成長促進微生物(PGPB)のシンビオーム系において、ウキクサ科植物の光合成活性とバイオマス生産が促進するメカニズムをメタボローム解析を駆使して解明することを試みた。その結果、クロロフィル合成経路とカルビンサイクルの代謝物生産が活性化していることを突き止め、これが光合成とバイオマス生産の促進に繋がっていると考えられた。 また、ウキクサ科植物とPGPBを組み合わせた最適な窒素・リン除去システムを検討し、1. PGPBによってウキクサ科植物を活性化するタンクとその高活性ウキクサ科植物を用いた窒素・リン除去タンクの2タンク方式が良いこと、2. 窒素・リン除去とバイオマス生産の最適なウキクサ科植物植生密度(水面被覆率)は80~150%であることなどを明らかにした。その条件で実下水二次処理水20Lを処理するリアクターを作成し、効率的な窒素・リン除去を実証した。さらに、このウキクサ科植物とPGPBを組み合わせた窒素・リン除去システムを下水処理の仕上げ処理として導入することで、高度処理を導入した下水処理よりもコストとCO2排出を削減できることを試算した。 一方、ヨシと分解菌、またはウキクサと分解菌を組み合わせた内分泌撹乱化学物質(ノニルフェノールとビスフェノールA)およびアルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)の除去リアクター(1L)を構築し、都市河川水や下水中から全ての物質を長期間安定して除去できることを確かめた。
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