研究課題/領域番号 |
24310062
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
久保 幹 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60249795)
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研究分担者 |
森崎 久雄 立命館大学, 生命科学部, 教授 (50125671)
立木 隆 立命館大学, 共通教育推進機構, 教授 (60026573)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境技術 / 水質汚濁・土壌汚染防止・浄化 / 植物 / 微生物 |
研究概要 |
石油汚染土壌の微生物浄化(バイオレメディエーション)において、難分解性炭化水素である長鎖シクロアルカン分解菌を用いたバイオオーグメンテーション技術を構築してきた。また、土壌環境中での当該菌株を検出する新たな技術も構築した。これらの状況下で、バイオレメディエーション終了の指針と植生を回復させる第三世代のバイオレメディエーション技術の構築に取り組んでいる。 本年度の最大の研究実績は、植物が生育できる炭化水素濃度範囲を明確にしたことである。具体的には、1,000㎎/㎏以上の濃度では明らかに枯死する植物体が増加することが明らかとなった。さらに、小松菜においては、1,000㎎/㎏以下の土壌においては生育するが、10㎎/㎏の炭化水素しか存在しない土壌でも生育が悪いことがわかった。換言すると、植物種において異なるが、土壌環境中に微量でも炭化水素が存在すると、植物の生長に悪影響を与えることが確認された。従って、植生を回復させる石油汚染土壌の浄化のためには、完全に炭化水素成分を除去することが不可欠であることを明らかとなった。これは最終年度へ向けた非常に大きな成果となった。 また、土壌中に生息する石油分解菌およびその活性化には、全窒素(TN)および全炭素(TC)の制御が重要であることが明らかとなった。特に有機資材を用いた場合、顕著な効果が表れた。その制御に技術を実証するため、実汚染土壌を用いた浄化実験を行い、良好な結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
●自然界に分布する全石油分解菌の解析 アルカンヒドロキシラーゼ遺伝子とリアルタイムPCRを用い、環境中に存在する石油分解菌の存在および存在比率を明らかにした。全ての土壌サンプルにアルカンヒドロキシラーゼ遺伝子を有する石油分解菌が存在しており、バイオスティミュレーションが有効であることが実証された。 ●バイオレメディエーションにおける土着石油分解菌の挙動解析 全窒素(TN)および全炭素(TC)の量と比により土着石油分解菌が良好に動くことが確認された。従って、石油分解菌の投入と共に土着石油分解菌を積極的に活用することで更なる効率のよいバイオレメディエーションが行える可能性が示唆された(当初の目的が達成された)。 ●環境微生物の活性化・維持技術の構築 TN≧3,000㎎/㎏およびTC≧30,000㎎/㎏、さらにC/N=8~16の範囲で環境中に生息する細菌が活発に動き、同時に石油分解菌を活性化・維持できることが明らかとなった。この範囲で有機資材を投入することにより効率のよいバイオレメディエーションが行えることが明らかとなった(当初の目的が達成された)。 ●バイオレメディエーション浄化後の土壌肥沃度改善技術の構築 概ね1,000㎎/㎏以下であれば植物が枯死しないことが明らかとなった反面、10㎎/㎏の低汚染状況下で、小松菜の生育が顕著に悪くなったことから以下のことがわかった。石油汚染土壌における植物生長の限界値:概ね1,000㎎/㎏であるが、微量の汚染においても植物生長は影響を受ける。従って、石油汚染は、ゼロにすべきである。本研究において、当初の目的の一つは達成できたものと考えている。 ●実汚染土壌を用いた浄化・環境回復実験の実証・実践 実汚染土壌を用い、TNおよびTCを制御する新規バイオレメディエーションの実証実験を行い効果が確認された(当初の目的を達成した)。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から、植生を回復させるためには、石油汚染を完全に取り除くことが必要であるとの知見が得られた(概ね植物が生育できる環境は1,000㎎/㎏以下)。これらの知見を基盤とし、最終年度は「バイオレメディエーション浄化の指針」を明確に打ち出すための確認実験を行う。 次に、石油汚染を完全に取り除くため、有機資材投入と共に植物を定植することにより土壌微生物を活性化させる手法を検討する。特に短時間で栽培可能な植物と根圏を拡大できる植物を選定し、土着石油分解菌の挙動解析を中心に「有機資材+植物」による微量石油除去技術を確立させる。 基盤研究としては、アルカンヒドロキシラーゼ遺伝子をマーカー遺伝子とした石油分解微生物の解析技術を構築する(PCR-DGGE)。その技術を用い、どのような種類の石油分解菌が石油浄化に貢献しているかを明らかにする。また、嫌気微生物の解析技術を構築し(嫌気性微生物に特有の遺伝子をマーカー遺伝子とする)、バイオレメディエーションに及ぼす嫌気性微生物の貢献を解析する。最終的に本研究の目的である「植生回復を実現する第三世代バイオレメディエーション基盤技術」を構築する。
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