研究課題/領域番号 |
24310068
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉山 正明 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (10253395)
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研究分担者 |
加藤 晃一 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20211849)
藤井 紀子 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (90199290)
佐藤 信浩 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (10303918)
大場 洋次郎 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (60566793)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中性子小角散乱 / 部分重水素化 / コントラストマッチング / 複合タンパク質 |
研究概要 |
タンパク質の溶液中における構造及び構造変化を明らかにすることはその機能発現機構を理解するために大変重要である。そこで、この溶液中での構造解析手法として小角散乱法が注目されている。また、固定された構造を持つのではなく結合対象によりその構造を変化させる天然変性タンパク質においても、構造変化が溶液中で進行し、結晶構造解析では見ることができない不定形領域も散乱に反映されるため、天然変性領域等の構造解析にはこの小角散乱が有力な手法である。ただし、タンパク質複合体における特定部分(天然変性領域など)の構造を観測するためには、中性子の特徴を生かした試料重水素化と溶媒コントラスト変調法が必要である。しかしながら、これらを組み合わせた手法は解析法は未開発である。 一般的に上記の手法では、軽水素化タンパク質と重水素化タンパク質を含んだ系を40%重水水溶液中において混合することで、軽水素化タンパク質からの散乱を消去し、重水素化タンパク質からの散乱を選択的に観測する。しかしながら、本手法では溶媒中に含まれる多量な軽水素(溶媒の60%は軽水)から非干渉性散乱が試料の透過率の減少とバックグラウンド散乱の増加を招き、統計制度の良いデータを得ることを困難にしている。この問題を解決するためには、重水溶媒中で消去できるタンパク質と軽水素化タンパク質の混合系を用意し、軽水素化タンパク質の構造を選択的に観測することを提案する。 本研究では、計算上75%重水素化タンパク質が重水溶媒中で散乱が消去されることに注目し、実際に75%重水素化タンパク質を調製し、それと会合する軽水素化タンパク質の混合系を重水水溶液中で観測し、軽水素化タンパク質のみが観測できることを確認した。本手法は、タンパク質複合系の構造を溶液中においても精密に解析できることを提供するものであり、非常に有意義なものである。 (
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本国内のJ-PARC、海外ではISIS(イギリス)、ILL(フランス)で実験を行い。新たに75%重水素化試料及びコントラスト変調法を用いた中性子小角散乱法の開発に成功している。この手法は、従来の手法に比べ短時間でこれまでにない統計精度で散乱データの取得を可能にするものであり、今後、多くの系への適用が期待されている。以上より、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのコントラスト変調法を用いたタンパク質の構造解析研究を進める。特に75%重水素化タンパク質を用いた中性子小角散乱を用いて複合タンパク質の構造研究を行う。加えて、今後の発展の基礎となるダイナミクスの研究基盤の構築を目指す。ダイナミクスの研究においては中性子小角散乱のみならず中性子スピンエコー法を用いたタンパク質のドメイン運動の解析法の開発を目指す。これにおいては、MDなどの計算機実験も複合的に用いて、新たな解析手法の開発も目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においてこれまで外注していたタンパク質の調製を一部申請者自身で作成を行うために使用すること。加えて、中性子スピンエコー実験を始めあるために外国旅費と大量の試料作製のために資金が必要にあることが判明したので、その資金として繰り越しをした。 今年度は繰越金は上記の趣旨にのっとって、主として以下の使用を考えている。 (1))タンパク質試料調製用試料購入費用として22万円。(3)外国旅費として30万円。
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