研究課題/領域番号 |
24310069
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
磯山 悟朗 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80125989)
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研究分担者 |
加藤 龍好 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (20273708)
入澤 明典 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (90362756)
川瀬 啓悟 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60455277)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射光 / FEL |
研究概要 |
日本で唯一のTHz-FELの高度化とその性能を評価した。1)高速検出器:FELの増幅率を容易に計測するため、ショットキーダイオードと高速焦電素子、Ge:Ga半導体検出器などの高速THz検出器を探索し、それらの特性を評価した。大パワー領域では線形応答性が高く室温で動作する高速焦電素子を、低パワー領域では検出感度が高いGe:Ga検出器を組合わせて使う手法が最も有力である。2)時間構造:FELのミクロパルス長は20ピコ秒以下であると思われるが、前述の高速検出器では直接測定することは出来ない。そこでマイケルソン干渉計を整備して高い精度で干渉パターンの測定をした。ミクロパルスの時間幅はFELの動作で大きく変わり、短ければ数ピコ秒又はそれ以下になることが分かった。3)27 MHzモード:ライナックの電子銃用に幅5 nsの電子パルスを、37nsの間隔で8 us連なるパルス列を発生することが出来るグリッドパルサーを製作した。これを用いてFELに使用する電子バンチのピーク電流を従来の4倍に増やし、FELの増幅率を格段に高める27 MHzモードを開発した。その結果、従来の運転で最大3 mJであるマクロパルスエネルギーを10 mJを超えるまでに高めることができた。その結果、波長80 umでのミクロパルスエネルギーは0.1 mJに達した。4)ピークパワー評価:FELミクロパルスのピークパワーは、46 MW、焦点距離12.5 mmの軸外し放物面鏡で集束した時のピークパワー密度は0.7 TW/cm2と、THz-FELとしては世界最大強度を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
FELの増幅率を増大するために、ライナックの電子銃用27MHzグリッドパルサーを開発して、電子ビームのバンチ数は1/4に減少するが、バンチあたりの電荷量を従来に4倍増やした。その結果、電子ビームエネルギーが15 MeVの時、FELミクロパルスエネルギーを5 uJから0.1 mJと20倍高めることに成功した。焦点距離12.5mmの軸外し放物面鏡で集束した時のピークパワー密度は波長80umで0.66TW/cm2と、THz-FELとしては世界最大強度を実現した。
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今後の研究の推進方策 |
THz-FELの強度をさらに高める研究を行ない、増幅率の測定に加えて波長スペクトル、時間構造を測定して、FELの大強度動作の機構を解明して更なる高度化の基礎を固める。更に、高いFEL ゲインを利用して波長領域を長波長側に拡大する。その時に問題になるのが光共振器の損失であるが、回折損失と光ガイディングの効果が競合すると考えられる。回折損失の計算値は、波長300 um で60%程度であるので、光ガイディングが無くても高ゲイン動作が実現すれば目標の300 um を実現することが可能であると考える。これらの研究によって得られた結果を取りまとめて学会発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
THz-FELの高出力化を実現したとこにより、特性測定やTHz利用に向けた準備研究に集中して、FELの高度化や計測系の整備などを翌年度に延期したため。 THz-FELのピーク出力がフェムト秒レーザー励起THz源に比較して1桁高い強度を実現しているが、更にパワーを増加するためのFEL高度化と、大ピークパワーのTHz光を計測するための測定系の整備に使用する。
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