研究課題/領域番号 |
24310074
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
藤井 健太郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (00360404)
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研究分担者 |
秋光 信佳 東京大学, アイソトープ総合センター, 教授 (40294962)
藤井 紳一郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (10415739)
加藤 大 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (80533190)
月本 光俊 東京理科大学, 薬学部, 講師 (70434040)
成田 あゆみ 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 博士研究員 (50633898)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射光 / 軟X線 / ATP / 生物効果 / 分子変化 |
研究概要 |
平成25年度はまず、軟X線を照射したときに起こるATPの分子変化を、軟X線吸収スペクトルの変化から予測した。それによると、ATP薄膜に軟X線を照射すると、ATP分子中の糖部位のC-O結合切断が効率よく起ることが明らかになった。さらに、ATP溶液に対してγ線照射を段階的に行い、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)を用いた測定を行った。検出器としてすべての核酸分子を直接酸化検出することが可能なナノカーボン電極を配置した。γ線の照射量に応じた変化としては、リン酸基の加水分解によるATP量の減少が見られた。また、質量分析結果から、リン酸基の加水分解以外の分子変化を示唆する結果を得た。電気化学分析では、リン酸基の加水分解に伴うATP量の減少が見られたことに加え、5Gyのγ線を照射したATP試料のみ、未知ピークが観察され、質量分析と同様の分子変化が確認された。電気化学的反応によって検出された観点から、アデニン環構造の破壊が起きている可能性は低く、不飽和二重結合への水酸基の付加反応や、アミノ基の酸化反応が進行していることが推察された。上記の分析に加えて、ATPの生化学的な活性を評価するために、ATP溶液を様々な強度のγ線照射あるいはX線照射した後、ルシフェラーゼによるATP加水分解活性ならびに試験管内転写系を用いたRNA合成の基質としての活性の2点を調べた。その結果、放射線照射依存的なATP加水分解活性の低下が認められた。一方、RNA合成基質としての活性に明瞭な活性低下は認められなかった。これらの生化学実験の結果は、放射線照射によるATPの化学的変化がATPの生化学的活性の低下を導くことを示唆する。さらに、ATP受容体活性化能についてERK1/2活性化を指標に検討したところ、Tris溶解ATPの30Gy照射によりATP受容体活性化能が低下していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は計画時に予定していた放射光を用いた実験及び照射試料の質量分析や電気化学分析による分子構造変異の同定実験について概ね順調に遂行することができた。また、生物学的効果を検証する実験においても実験条件の最適化を行うことができ、試験的な結果について、論文発表や学会発表などを行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究について、計画に基づいて概ね順調に研究が進んでおり、今後の研究は研究計画に従って、放射光実験、および照射試料の分析実験による評価、そして、照射試料の生物学的評価を行い論文や学会などに発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は各分析実験において、定量的な実験データの取得を目指して実験を行った。その結果、さらに定量データの高度化を進めるために、電気化学セルの改良が必要であることが明らかになった。そのため、次年度に予算を繰り越してその高度化を図るための計画の見直しが必要となった。 電気化学セルの高度化を行うため、昨年度の予算の一部を利用して、当該セルの改良を行う。具体的には放射光照射に用いる溶液試料用のセルにカーボンコーティングを施し、電気化が化学分析を行うためのセルを作成する予定である。
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