研究課題
平成26年度は、ATP分子が水溶液中(pH: 2.8)およびTrisバッファー溶液中(pH: 7.0)でX線の照射によってどのような分解パターンを示すかを調べた。X線を照射したATP水溶液とATP Trisバッファー溶液のHPLC分析を行った結果、ATP分子は、水溶液中の方がバッファー中よりも顕著に塩基が脱離すること、そしてその塩基脱離は、X線の照射線量に応じて増加することが明らかになった。Trisバッファー溶液中で、塩基脱離が抑制されたことから、試料溶液のpHがATP分子の安定性に大きく寄与することが示唆された。これは、溶解物質の照射による電子授受の影響、Trisによるスキャベンジ効果などによるものと考えられる。X線を照射したATP水溶液のHPLC分析結果からは、X線を照射したATP試料のみ、未知ピークが観測された。溶出時間がATPよりも速いこと、電気化学的反応によって検出された観点から、アデニン環構造の破壊が起きている可能性は低く、不飽和二重結合への水酸基の付加反応や、アミノ基の酸化反応が進行していることが推察された。この未知ピークはイノシン三リン酸(ITP)の溶出と一致していることが明らかとなった。放射線によってATPが変化すると、どのような細胞応答に変化が生じる可能性があるかについて検討を行った結果、神経膠芽腫A172細胞において、γ線によるDNA損傷修復過程にATPをリガンドとするP2X7受容体、P2Y13受容体、UDPをリガンドとするP2Y6受容体の関与が示唆され、さらに、ATPによって活性化閾値が低下するTRPV1チャネルの関与が示唆された。また、悪性黒色腫B16細胞においてもP2Y受容体やTRPV1チャネルの関与が示唆された。これらの結果から、放射線によるATPなどのヌクレオチドの構造変化は、がん細胞の放射線感受性に変化を生じさせている可能性が示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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