研究課題/領域番号 |
24310087
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
矢代 航 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10401233)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | X線 / 顕微鏡 / 位相 / イメージング / 三次元 / ナノ材料 / 燃料電池 / 細胞・組織 |
研究概要 |
コンパクトな実験室X線源によって数nmスケールの空間分解能の三次元硬X線高感度顕微鏡を将来的に実現するための基盤技術の確立を目指した。本申請で提案する方法は、2009年に我々が提案した新しいタイプの硬X線位相差顕微鏡の着想をさらに発展させたもので、従来の方法にはない高感度の定量イメージングが実現できると期待される。本研究は、X線光学の知識と、先端的なX線光源技術、微細加工技術、および情報処理技術を駆使し、さらにエラストグラフィなどの新たなコントラスト形成技術を融合することによって、まずは百nmよりも高い空間分解能で、高感度あるいは短露光時間の硬X線顕微鏡の実現を目指すものである。 平成24年度は、研究協力者とともに投影型X線Talbot位相差顕微鏡の開発を行った。まずはサブpmの光源サイズの実験室X線源によりX線Talbot差分顕微鏡によるFresnelホログラフィの実証実験を行った。プラスティック標準試料や、燃料電池内部に使用される可能性のある材料など実用的な観点から要望の高い試料を用いて描出性能の評価を行った。 平成24年7月1日に研究代表者が東京大学新領域創成科学研究科から東北大学多元物質科学研究所に移るなど、本研究課題申請時には予想できなかった事態が生じたが、当初の計画通り、三次元位相イメージングのための投影型X線ラミノグラフィ顕微鏡システムの開発(光源の開発、位相格子の開発、X線波動光学シミュレータの開発、ラミノグラフィ三次元再構成アルゴリズムの開発)に着手するまでに至ることができた。 本研究の成果は、2013年2月にRoyal Societyの主催で開催された国際ワークショップの招待講演、および2013年3月の日本物理学会、その他いくつかの出版物において発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年7月1日に研究代表者が東京大学新領域創成科学研究科から東北大学多元物質科学研究所に移ったことに伴い、引越、X線発生装置設置の届出、実験装置立ち上げ、その他研究室立ち上げに伴う庶務などに数ヶ月以上を要したため、当初計画していた実験をすべて行うことが困難であった。当初の計画項目に優先順位をつけることで対応した。
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今後の研究の推進方策 |
投影型X線talbot位相差顕微鏡(三次元顕微ラミノグラフィ)の開発のさらなる推進を行う(光源の開発、位相格子の設計・開発、高速並列計算機による解析アルゴリズムの開発)。 設計・開発した複数の光源および位相格子により、実際に光学系を組み立てる。はじめは比較的大きい光源サイズ、長い波長、小さいラミノグラフィック角で、投影型X線ラミノグラフィシステムの実現可能性を明らかにする。本年度は、第一段階としてサブμm空間分解能の位相イメージングを目指す。 特に光源と光学素子については、リング状光源、およびリング状位相格子が不可欠である。リング状光源の実現方法として、電子ビームスキャン方式、リソグラフィによるターゲットパターニング方式、キャピラリー+リングスリット方式などを試みる。リング状位相格子については、多層膜+リソグラフィ方式、X線リソグラフィ用のマスク作製技術を応用した方式(フレキシブル位相格子)などを試みる。 ラミノグラフィ三次元再構成アルゴリズムのさらなる高度化も行う。大きなラミノグラフィック角および少ない投影数でも定量的な再構成ができるようにするため、本研究では統計的方法やコンプレスドセンシングなどの最新の情報処理技術を積極的に取り入れてアルゴリズムの改良を進めていく。 さらなる高空間分解能・高感度化の取り組みも開始する。すなわち、光源サイズを縮小することにより高空間分解能を目指すとともに、位相格子の周期を小さくすることにより、光学系のサイズを小さくする。さらにラミノグラフィック角を大きくすることにより、検出器の単位画素あたりに入射するフォトン数を増やすと同時に、大面積検出器が不要となるような光学系を目指す。 さらに、エラストグラフィなどの新たなコントラスト形成技術の融合によって、X線位相イメージングの感度の限界をさらに超える研究や、液体ターゲットの使用による大強度微小X線光源の実現を目指す研究など、萌芽的課題にも鋭意取り組んでいく。 これらの研究によって得られた成果は、学会発表(国内、海外)、学術雑誌への投稿はもちろん、インパクトの高い成果が得られた場合にはプレスリリースも積極的に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
学術研究助成基金助成金の次年度使用額(9,266円)については、少額であったため、次年度の研究費と合算して物品費などに使用する計画である。
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