これまでの超分子ヒドロゲルライブラリーの構築により得られた知見に基づき、効率的な純水のゲル化を実現する化合物を分子設計した。有機合成の手法により、分子設計した両親媒性トリスウレア化合物の合成を達成した。期待した通り、最小ゲル化濃度1.5 mMで超分子ヒドロゲルの形成が確認された。 前年度に引き続き、超分子ヒドロゲルを支持体とした、未変性タンパク質の電気泳動について検討を行った。電気泳動後の超分子ヒドロゲルよりタンパク質試料を効率的に回収する方法を検討し、凍結した超分子ヒドロゲルに純水を加え遠心分離するという、極めて簡便な手法により50%以上のタンパク質を回収できることを明らかにした。さらに、回収したタンパク質が未変性な構造を保持していることを、タンパク質の活性評価により確認した。また、電気泳動に用いる緩衝液のpHを制御することにより、これまでの酸性未変性タンパク質に加え、塩基性未変性タンパク質の超分子ヒドロゲル電気泳動も実現した。種々のタンパク質の分離を検討した結果より、超分子ヒドロゲル電気泳動における分離様式の解析を行った。その結果、両親媒性トリスウレアより形成する超分子ヒドロゲルを支持体としたとき、未変性タンパク質試料は、その等電点に強く依存した分離様式であることが明らかとなった。 カルボキシル基を導入した両親媒性トリスウレアの自己集合により形成する超分子ヒドロゲルを用い、物質の吸着及び放出の制御を検討した。陽イオン性の色素分子は、超分子ヒドロゲルに効率的に吸着された。続いてこのゲルを塩基性水溶液に浸すと、超分子ヒドロゲルの崩壊を伴いながら吸着した色素分子を放出することを明らかとした。
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