研究概要 |
本研究は、メゾスコピックスケール(~数十nm)のらせんピッチを持つ「メゾらせん構造」をベースに、均一なキラリティとメゾスコピックスケールのらせんピッチを備え金属らせん構造が高分子マトリクス中に配列した「メゾらせんハイブリッド構造」の実現を目指している。研究計画初年度である平成24年度には、第2及び3年度の基礎となる基盤試料の合成と装置の整備に注力した。計画した項目に対する成果を以下に列記する。 (1)粒径と表面エネルギー(表面被覆)を様々に変化させた金属ナノ粒子の合成:トリブロック共重合体が形成するメゾらせん構造の金属化に必要な金属ナノ粒子を合成した。金属種として化学的に安定でかつ粒径と表面エネルギーを制御可能である「金」ナノ粒子を、塩化金酸溶液に表面被覆剤であるチオール末端ポリスチレンの存在下で金イオンを水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を用いて還元することにより、粒径3~5nmで粒径を制御して合成することに成功した。 (2)Poly(styrene-b-butadiene-b-methyl methacrylate)(SBM)の分子量設計と重合によるメゾらせん相の直径の制御法の確立:上記の金粒子をブタジエン(B)相に選択的に含有させた状態でメゾらせん構造を取るSBMの分子設計を行い、重合を行った。得られたSBMを電子顕微鏡により観察したところ、B相がらせん形状をしていることを確認した。また、液晶分子などのらせん相の巻き方向の制御に有用と考えられる分子をSBMに導入できるようにS部分の末端にアミノ基を持つSBMも重合した。 (3)外部磁場印加装置の設計・製作:SBMやそのメゾらせん相を金属化した試料の強磁場化での配向挙動を解明することを目的に、超電導磁石装置内で使用可能な加熱装置を作製した。ボア(直径70mm,深さ177mm)を有する光学観察用超電導磁石MicrostatBT(Oxford Instruments plc(Tubney Woods, Abingdon, Oxon OX13 5QX, UK)製)に設置可能で、かつ窒素雰囲気下で200°Cまで試料を加温可能な加熱装置を開発した(装置の製作は旭工業所株式会社(兵庫県相生市))。これにより,5Tの強磁場化において試料を熱処理することが可能となり、磁場によるメゾらせん構造の配向及び掌性制御を検証することができる。
|