研究課題/領域番号 |
24310092
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
陣内 浩司 九州大学, 先導物質化学研究所, 特任教授 (20303935)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ブロック共重合体 / 電子線トモグラフィ / 自己組織化 / メゾスケール / らせん構造 |
研究概要 |
研究の第2年目であるH25年度には、昨年度の成果を踏まえ、第3年度の基礎となる「装置の基本性能の確認・整備」および「らせん構造の制御法の開発」に注力した。得られた成果を以下に列記する。 (1)H24年度に作製した金ナノ粒子のらせん相への導入:トリブロック共重合体の形成するらせん相へ(昨年度合成に成功した)金ナノ粒子の導入を試みた。金ナノ粒子のらせん相の選択的な導入の再現性に難があった。そこで、金ナノ粒子を(らせん相ではなく)Gyroid構造の一つのネットワークに選択的に導入する実験を行い、この知見をらせん相への導入に役立てることとした。その結果、ネットワークの直径に対する粒子の直径が予想以上に大きな影響を与えている可能性が高いことが分かった。 (2)外部磁場印可装置によるメゾらせんハイブリッド構造の創成:H24年度は、超電導磁石装置内で使用可能な加熱装置を作製した。H25年度はこの試作装置の性能試験を行った。加熱部のマイクロセラミックヒータの断線、想定温度へ到達しない等の問題が発生したため改良を実施した。高ワット数のセラミックヒーターへの交換、配線の見直し、断線対策として低電圧運転等を検討し、所定の温度へ昇温可能であることを確認した。このため、実際の完成は今年度にずれ込み、また、本テーマを担当した特任助教(連携研究者)が平成25年11月で異動したため、進捗が多少遅れている。 (3)らせん構造のキラリティ制御のため、まず、キラリティを持つ両親媒性低分子をトリブロック共重合体の自己組織化の過程に存在させ、その効果を調べた。残念ながら、キラルな両親媒性低分子はメゾらせん構造の構造形成に影響を与えないことが分かった。一見ネガティブな結果であるが、らせん相の構造形成を類推する上で重要な成果と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、代表者が見出したメゾスコピックスケール(~数十nm)のらせんピッチを持つ「メゾらせん構造」をベースに、均一なキラリティとメゾスコピックスケールのらせんピッチを備え金属らせん構造が高分子マトリクス中に配列した「メゾらせんハイブリッド構造」の実現を目指している。第2年度であるH25年度は、H24年度の結果をベースにして、(i)金ナノ粒子の導入によるハイブリッド化のための基礎的知見、(ii)メゾらせん構造の配向を制御する可能性のある種々の要因、の2点について検討を行った。その結果、金ナノ粒子のドメインへの導入について、Gyroid構造に対して金粒子の導入を図ったところ再現性の良い結果が得られ、粒子とドメインの大きさの相対的な関係が重要であることが分かってきた。この結果はらせん構造に対するハイブリッド化に直接関係するものでは無いが、らせん構造へのナノ粒子導入の際の重要な指針となる。なお、Gyroid構造へのナノ粒子導入の結果は、ネットワーク相以外のマトリクス部分を選択的に除去することで、高性能な触媒としての応用の可能性があることから、この観点に基づいて報告したところNature Communicationsに掲載が決まった。外部磁場印可および低分子によるらせん相のキラリティ制御については、未だ成功はしていないが、第3年度に向けて指針となる予備結果は得ている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は、おおむね計画通りに進んでおり、基礎的な知見は得られつつある。H26年度の変更点としては、外部磁場によるらせん相の巻き方向制御の研究を担当する予定であった特任助教(連携研究者)が学外へ転出したため、今後、本科学研究費で雇用している研究員と研究代表者が対応を行い、他の検討項目と併せて、らせん相のハイブリッド化、および、化学的な手法によるらせん相の巻き方向制御に注力する。H26年度は、これまでの研究成果に基づいて次の項目を実施する。 (1)H25年度の知見を利用し、金ナノ粒子のサイズを制御しながららせん相への導入を集中的に進める。 (2)らせん構造のキラリティ制御のためにキラルな両親媒性低分子を用いたが、目に見えた効果は得られなかった。そこで、トリブロック共重合体の自己組織化の際に液晶分子を導入し、その旋回性を駆動力としてらせん相の巻き方向を制御できないかどうか試みる。もし液晶分子のみでらせん相の巻き方向制御が可能であるかどうか判断する。もし低分子での効果が不十分である場合、液晶分子をポリスチレンに連結した分子を合成し、これをトリブロック共重合体に導入する。 (3)外部磁場印加装置を上記金属含有メゾらせん構造に適用し、メゾらせんハイブリッド構造の創成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
雇用しているテクニカルスタッフが2013年11月に欠勤したため、予定していた額との差が生じた。 繰り越し分については平成26年度分の物品費として使用する予定である。
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