研究課題/領域番号 |
24310095
|
研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
馬 仁志 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (90391218)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ナノシート / グラフェン / 水酸化物 / 遷移金属 / 超格子 / レイヤーバーレイヤー |
研究概要 |
異種電荷を持った(還元)酸化グラフェンと遷移金属(Co-Al, Co-Ni)複水酸化物ナノシートを直接混合してフロキュレーションさせ、両者の静電的相互作用によりナノシート同士の交互積層することを可能にした。絶縁性の複水酸化物ナノシートと導電性のグラフェンとの直接隣接する積層超格子構造の層間距離は、酸化グラフェンの還元程度に依存し0.8nm以上1.3nm未満の範囲であることを明らかにした。このような構造を有する超格子構造体は、優れた電気化学特性を有し得ることが確認できた。 超格子構造体を擬似容量キャパシタ電極材料として用いた場合、遷移金属複水酸化物ナノシートの酸化・還元反応により、最大700F/gまで比容量を増大することが可能であることを明らかにした。この比容量は、グラフェン電気二重層スーパーキャパシタの6倍であり、グラフェンよりも優れた電極材料となり得ることを示唆する。また、絶縁性の複水酸化物ナノシートと還元された導電性のグラフェンとが交互に分子レベルで配列しているので、電荷輸送効率が向上し得る。その結果、超格子構造体を用いた場合、還元された酸化グラフェンに匹敵する高速充電・放電の高出力性能を示した。具体的には、約100Hzまで理想的なキャパシタ特性を維持できる。このレート特性は、超格子構造体が擬似容量キャパシタやスーパーキャパシタの電極材料として好適であることを言える。 また、良質な水酸化物ナノシートを得るために、その前駆体である水酸化物ナノコーンの合成過程を最適化し、高純度のナノコーンをオイルバスで安価に合成できるプロセスを開発した。ナノコーンをホルムアミド・水の混合溶媒中において、加熱により剥離させる新しい手法を考案し、その剥離メカニズムを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラフェンと遷移金属水酸化物ナノシートとの静電的相互作用を利用したフロキュレーションプロセスを活用し、ナノシート同士が交互に積層した超格子構造が形成できることを実証した。超格子構造体を擬似容量キャパシタ電極材料として用い、優れた電気化学特性を有し得ることが確認できた。研究目的である大容量電気化学エネルギー貯蔵デバイスの作製に向けて順調に進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、水酸化物ナノシートとグラフェンを交互に吸着させる(レイヤーバイレイヤー累積)ことによりヘテロ多層膜の構築を試みる。粉体サンプルと比較ながら、電気化学特性を考察し、さらに向上していく予定である。 グラフェンと遷移金属水酸化物ナノシートの層間環境を様々にチューニングすることによって、電気化学反応に適した高効率のイオン拡散や電子輸送が両立できる超格子構造を設計する。特に、酸化グラフェンの還元程度を精密に制御して電荷密度を調整し、水酸化物ナノシートと複合化する際に、電荷バランスを補償するカウンターイオンを意図的に導入することを試みる。高い擬似キャパシタンスが得られる遷移金属イオン組成、再積層構造とその作製条件をさらに最適化する。 得られた成果を取りまとめ、成果の発表を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
海外研究者との研究交流を図るために、60万円の謝金を計上したが、都合により実現しなかった。これと物品費の一部を繰り越しし、翌年度の研究費と合わせて、実験装置の購入を計画した。 さらに良質なグラフェンを合成するため、膨張黒鉛から剥離するという新しい合成手段を試みる予定である。そのため、高温型マイクロウェーブ合成装置の購入を計画している。また、実際デバイスより近いコインセルを使用した電気化学特性の考察実験を予定し、自動コインセルカシメ機の購入を計画している。平成25年度から繰り越しした研究費と合わせて、これら実験装置の購入にあたる計画である。国内学会1回、海外学会2回程度の研究成果発表を予定している。
|