研究実績の概要 |
これまでのCo2+-Al3+系、Ni2+-(Co2+)-Co3+系水酸化物ナノシートに加え、本年度はNi2+-Fe3+系のレドックス活性な水酸化物の合成及びナノシート化に成功した。層状水酸化物中の遷移金属組成(Ni2/3-Fe1/3, Ni3/4-Fe1/4, Ni4/5-Fe1/5)を系統的にチューニングすることによって、ナノシートの電荷密度の調整を可能にした。 各種Ni2+-Fe3+系水酸化物ナノシートを用い、酸化グラフェン(GO)や還元グラフェン(rGO)との交互積層することにより超格子構造を有する複合材料を作製した。この超格子複合材料を電極触媒として水の電気分解による酸素発生反応を考察した。酸化グラフェンは触媒活性を殆ど示さなかったのに対し、レドックス活性な水酸化物ナノシートとGO或はrGOとの複合材料は酸素発生を高効率的に促進することが分かった。水酸化物の遷移金属組成や層間間隔等が電極触媒に及ぼす影響を明らかにした上、組成及び構造を最適化した複合材料(Ni2/3-Fe1/3・rGO)は過電圧が約0.21 V、Tafel勾配が約40 mV/decadeに達する優れた性能を確認した。この高い触媒効果により単三電池(1.5V)一本だけで水の電気分解が可能であることを初めて実証した。レドックス活性な水酸化物ナノシートと高導電性グラフェンとの分子レベルでのヘテロ複合は協同作用を産み出し、優れた電気化学性能につながったと考えられる。本研究によって、レドックス活性な水酸化物とグラフェンとの超格子複合材料は貴金属代替酸素発生電極触媒としての新たな応用可能性が期待される。
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