研究課題/領域番号 |
24310100
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
高村 禅 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (20290877)
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研究分担者 |
沖野 晃俊 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (60262276)
浮田 芳昭 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (40578100)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / マイクロプラズマ / 環境分析 / 分析化学 / 液体電極プラズマ / バイオセンシング |
研究概要 |
液体電極プラズマの発光に大きく関わる界面の動きを制御し、本プラズマのさらなる解明と検出限界の向上、及び応用を進める。平成25年度は、次の項目について研究を行った。 1.プラズマの過渡現象の解明と感度上昇: 平成24年度の研究により、プラズマ中での元素発光には、界面濃縮が関わっていることがわかった。平成25年度は、「溶液中の元素の逃げを抑制」することで、この濃縮を効果的に起こし、これを検証する。具体的には、プラズマ発光部の壁面にくぼみ(行き止まりになっている副流路)を設け、パルス電圧でプラズマを発光させる。電圧印加前は、副流路も含め、流路は溶液で満たされている。電圧の印加により気泡ができプラズマが発生するが、この時副流路の中の溶液は副流路内に留まる。副流路は行き止まりになっているので、この溶液はプラズマと接し続け、連続的に揮発し、濃縮も進む。1回の電圧印加パルスで、副流路中の溶液が丁度蒸発するように副流路の長さを調整することで、溶液中の元素は、全てプラズマに直接接し、元素の種類に関係なく全てプラズマに入ってくることが期待できる(逃げの完全抑制)。これらの結果、様々な元素で2倍から5倍感度の上昇が確認でき、本メカニズムの重要性も確認され、過渡現象の解明と、感度上昇に大きく前進した。本年度はこの項目に集中したため、電圧2段階制御の研究は実施していない。 2.モデリング: 上記副流路中の蒸発に対して数値モデルをたてて、モデリングを行った。その結果は、副流路の実験結果と合致し、副流路のモデルの妥当性がある程度検証できた。 3.バイオアッセイ系との組み合わせ: 現在カラムとの一体化を検討している。このためには、少ない流量で感度良く発光させる必要がある。本年度は、マイクロポンプとカラムをプラズマ発光部と同じチップに集積化させることに成功した。これにより流量の大幅な削減にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、液体電極プラズマの発生過渡現象の解明と有機・無機分析への応用である。前者は、特に、従来の大型装置である誘導結合式プラズマ発光分析法(ICP)に対して、本法で特有な部分を明らかにしていくこと、これにより、より性能を高め、様々な新しい応用へ広げていくことである。この目的に対し、本年度実施した次の項目に対して、達成度の理由を述べる、 1.プラズマの過渡現象の解明と感度上昇: 本法の測定対象となる元素群は、(1)ICPでも本法でも良く発光する。(2)ICPでは発光するが、本法では発光が弱い。(3)酸化物が安定であれ本法で発光が弱い。の3つの元素群に分けられる、このうち(2)のメカニズムを解明することが、大きな課題であったが、今回の成果で、大きなヒントが得られたことになる。よって、概ね順調に推移していると考える。なお、当初の計画では、電圧2段階印加を試みることになっていたが、今回の副流路によってそれを上回る効果が得られたと考えられるため、2段階印加の研究は実施しなかった。 2.モデンリング: 実験に対応したモデル化ができているため、順調とした。 3.バイオアッセイ系との組み合わせ: 当初の計画であった、カラムとの組み合わせにおいて、最も大きな課題は、一般的なカラム中の流量に比べて、本法のこれまで得られた結果のうち感度・精度に最適な条件で必要とされている流量がケタ違いに大きいことであった。今回の成果で、この流量の違いの問題が解決できたため、順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、副流路を用いた元素の逃げの抑制が、感度、精度向上に有効であることが示唆されている。今後は、この方針をさらに進め、測定機の性能向上に結び付ける。また、この現象をより系統的に調べ、学術面も確立していく。このため、他の方法、たとえば高粘度の液体を使い、界面の動きを制御し、さらなる知見を得ることも考えられる。必要に応じて、モデリングも行う。 バイオアッセイ系との組み合わせは、実サンプルを測定し、検出限界を評価していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた、T字流路の実験をやめ、代わりに副流路を導入した。副流路の実験はうまくいき、予定の成果が得られつつあるが、実験方法の変更に伴い、評価チップの作製に、当初の計画ほど金額が必要ではなくなったため。ただし、副流路の実験は、チップの評価により高度な技術が必要なため、平成25年度予定していた予算を、平成26年度に回し、十分な評価に備えることとする。 変更した副流路の実験は、当初予定していたT字路の実験より、チップの評価により高度な技術が必要なため、これにあてる。
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