研究概要 |
本研究は,様々な空間オブジェクト分布の相互関係を統一的に解析するために,オブジェクト指向空間解析の理論構築を目的としている.特にここでは,空間がオブジェクトに与える影響よりも,オブジェクト群自体の性質・相互関係や,オブジェクトから見た空間の様態に着目し,オブジェクトの型に依存しない,どのような空間オブジェクトに対しても適用可能な汎用的解析理論の構築を目指している. 本年度はまず,既存研究の再レビューを実施した.特に軌跡分布の分析について,GPSや携帯電話を利用したデータ解析手法に関する知見を得ることができた. 次に,連続平面上の点分布間の相互関係を分析する手法を開発した.前科研で開発した手法は,いずれもオブジェクトの分布可能地点が有限個に限られた場合を想定している.ここではそれらをさらに拡張し,地点数を単純に無限大とするのではなく,地点間の相互関係を保持したまま,その密度のみを高める方法を取ることで,離散空間と連続空間の間の差異を処理している.地点間の相互関係については,当初の点分布を母点とするドローネ三角網を構築し,各三角形の重心を追加して再度,ドローネ三角網を構築するという,いわゆる再帰的手続きによって,その一貫性を担保している.この手法は,千葉市内の商業施設分布分析に対して適用し,計算時間の妥当性,結果の有効性などを検証している.また合わせて,このような大量の空間データとその分析結果を可視化する手法も開発している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既存研究のレビューにはやや時間を要したが,半年程度で完了している.また,連続平面上の点分布間の相互関係を分析する手法については,理論開発を済ませ,小サンプルデータでの試験運用まで終えている.申請時の計画よりもやや進んでいると判断することができる.
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