研究課題/領域番号 |
24310111
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
濱田 奈保子 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (70323855)
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研究分担者 |
川邉 みどり 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (80312817)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 食の安全安心 / フードシステム / バイオレメディエーション / バイオサーモメーター / 鉛 / 吸着 |
研究実績の概要 |
本研究は、安全・安心な生鮮水産物のフードシステムの構築を目標として、申請者が開発した2つの基盤技術を統合し、生産流通の現場へと試験的に導入するとともに、基盤技術の社会的技術としての受容性を、関係者とともに参加型アクションリサーチを行うことで評価することを目的としています。2つの基盤技術は ① バイオレメディエーションによる水質浄化技術 ② バイオサーモメーター(BTM)による品質管理技術です。 今年度は、当研究室で単離した海洋微生物SN-3菌を用いた重金属除去試験を行いました.具体的には水溶液あるいは人工海水にSN-3菌が生育するのに必要な栄養源を添加した人工海水培地において,銅,カドミウム,鉛が混在する条件下でSN-3菌を接種し,除去試験を行いました.各重金属濃度をICP-AESで測定した結果,水溶液,人工海水培地いずれにおいても,銅とカドミウムについては,SN-3菌による除去は観察されませんでした. 一方,鉛は水溶液で20%,NaCl 0%を含む人工海水培地で33%,NaCl 1.5%を含む同培地で63%,NaCl 3.0%を含む同培地で39%の除去が確認されました.除去能向上を目的とし,SN-3菌をアルギン酸カルシウムに固定化し,人工海水培地で培養した結果,鉛は塩分濃度や他の重金属の存在に関わらず,90%以上の除去率が得られました. SN-3菌による鉛の吸着等温線をFreundlichの吸着等温式とLangmuirの吸着等温式を用いて検討した結果,Freundlichの吸着等温式と高い相関が得られました.鉛水溶液のpHを変化させてSN-3菌を培養した結果,pHの上昇とともに除去量が増加したことから,菌体への吸着には表面の官能基が関与しており, SN-3菌は菌体表面に鉛を吸着していることが示唆されました.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海洋微生物SN-3菌による重金属除去試験については,分析系が確立している銅,カドミウム,鉛が混在する条件下で,アルギン酸カルシウムにより固定化したSN-3菌を用いた場合に,十分な除去が確認できました.また,除去メカニズムについてもFreundlichの吸着等温式と高い相関が得られたことから,SN-3菌の菌体表面への吸着であることが示唆されたことから,一定の成果が達成できたと考えられます. しかし,当初予定していたフィールド試験については,実施可能なフィールドが確保できず,実施できなかったことから,遅れていると判断しました.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに当研究室で単離した海洋微生物SN-3菌を用いた重金属除去試験を行い,鉛が除去可能であり,除去メカニズムは菌体表面への吸着であることが示唆されました.今後はこれまで検討してきた有機化合物と鉛が混在するモデル系を設定し,SN-3菌による除去試験を行います. BTMについては,これまで鮮魚の流通管理ツールとして多くの魚種で検討を進めてきましたが,エビ,カキ,ホタテ等の消費量の多い生鮮水産物を対象とし,BTMと相関する鮮度指標を抽出し,当該水産物についての鮮度を経時的に計測し,BTMの有効性を検証します.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたフィールド試験については,実施可能なフィールドが確保できず,実施できなかったため,想定していたフィールドまでの「旅費」とフィールド試験に係る「謝金」について残が生じました.また,フィールド(漁場)の水質,環境有害物質濃度調査について,当研究室で計測できない項目については外部委託する予定でしたが,この分を委託しなかったため,「その他」について残が生じました.
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次年度使用額の使用計画 |
フィールド調査は実施可能なフィールド確保ができなかったため,次年度は実験室内でモデル系を構築する試験に注力します.
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