研究概要 |
本研究の目的は混雑現象のあるネットワークシステムの安全な設計と効率的運用のための基礎的理論を構築することである.このためにシステムを反射壁のある多次元ランダムウォークとその拡散近似モデルであるSRBM(セミマルチンゲール反射型ブラウン運動)により表し,定常分布の裾の漸近特性を求め,ネットワークシステムの安全設計に役立てる.これまで,漸近特性は2次元(2ノードのネットワーク)の場合にしか得られていない.本研究は2次元の場合の結果を精密化し,3次元以上への拡張とそれらの安全設計への応用を目指し,以下の研究成果を得た. (1)2次元SRBMの定常分布について裾の漸近特性の精密化を行うために,大偏差値理論の結果を幾何的に表現した(Dai教授との共同研究,論文として発表).この成果に基づき,3次元以上の場合の漸近特性の研究をJim Dai教授と彼の大学院生Jian Wuと始めた(研究継続中) (2)3次元以上の反射壁のある多次元ランダムウォークの特別な場合として到着客が複数の待ち行列から最小の待ち行列を選ぶモデルの定常分布の裾の漸近特性を得た(小林正弘,佐久間大との共同研究,論文として発表). (3)反射壁のある2次元ランダムウォークの定常分布の裾の漸近特性について既存の結果を精密化した(小林正弘との共同研究,論文として発表). (4)マルコフ変調多次元反射型ランダムウォークは待ち行列ネットワークを表すより精密なモデルであり,その特性を調べることはSRBMによるモデル化の妥当性を検証する上で重要である.その研究の第一歩として,一部の背後過程が反射壁をもつマルコフ加法過程とマルコフ変調2次元流体待ち行列モデルに関する関連研究を始めた. (5)漸近特性の安全設計への応用について簡単な例で検討を行った.
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