研究概要 |
橋梁やトンネル,高圧送電鉄塔などのインフラストラクチャに無線通信機能を有したセンサを高密度に配置し,各点の温度・ひずみ等の観測データを基地局に集約して状態監視を高頻度に行うことにより,崩落・火災など大事故によるライフライン停止の危険性を最小化できる.本研究ではパッシブRFIDタグの技術を基礎として,検査車など移動体からUHF帯域の無線センサに電磁波を放射して安全監視を行う遠隔計測システムの実現を目指す.このような遠隔測定のためには10m以上の通信距離が望まれるが,屋外使用が法令で認められている電磁波電力では,通信距離は約2m程度に留まる.そこでトンネルや鉄塔などの振動により電力を発生する微小発電機を開発し,これを申請者らが開発した極低消費電力の無線センサに搭載することで10m以上の通信距離を実現し,遠隔計測を可能とする. 本研究では環境の振動からエネルギーを回収する方式として,電磁誘導式の振動発電装置を開発する.この発電装置では,環境の振動によりコイルと磁石を相対的に変位させ,電磁誘導により電力を発生させる.平成24年度は振動発電装置の基本設計を行い,コイルを振動させる方式と磁石を振動させる方式を持つ,2つの異なる試作機を作成した.試作器の筐体は3次元プリンターを用い,ABS-like樹脂で作成した.試作した装置を加振器により振動させ,共振周波数や発電量を測定した.この結果,コイル振動型では600μW,磁石振動型では20μWの電力が得られることが分かった.これらの試作機は数cmの大きさがあり,無線センサに使用するためには大きさを小さくする必要がある.たとえばサイズを現状の1/10にすると電力は1/1000になる.一方,無線センサには少なくとも数10μWの電力が必要であるため,発電量を現状の100倍にする必要がある.このためには磁束のもれを防ぐための磁気コアを導入することなどの改善が必要であることがわかった.また今年度は,振動発電機を解析するための準静磁界・電気回路・力学系の連成解析手法を開発した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,H24年度は振動発電装置の基本設計を行う予定であったが,これに加えて試作機の製作,測定実験を行うことができ,当初の計画以上に研究が進展した.一方で1振動発電装置を搭載する無線センサの開発がやや遅れている.振動発電装置の解析手法の開発は予定通り順調に進行している.
|