研究課題/領域番号 |
24310123
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
柄谷 友香 名城大学, 都市情報学部, 准教授 (80335223)
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研究分担者 |
近藤 民代 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50416400)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自然災害 / 減災 / 危機管理 / 生活再建 / エスノグラフィー / 東日本大震災 |
研究概要 |
本研究では,岩手県陸前高田市内における地域住民主体の避難所・応急仮設住宅の運営実態と課題,仮設商店街の早期再開と経営状況,自主住宅移転再建のプロセスと課題を参与観察及びヒアリング調査によって把握してきた.これらの調査対象の共通点は,甚大な被災を受けながら行政に依存せず,自ら重要他者とのネットワークを活用し,関連する情報や知識を収集し,土地や建物を選定・取得し,早期の生活や事業の再開を果たしている点である.主な研究成果は以下の通りである. (1)仮設施設により事業を再開した陸前高田市内の4商店街の代表および店舗経営者を対象として,2013年8月29日から9月1日に,被災後から事業再開に至るプロセスに関する約2時間のヒアリング調査を行った.調査内容は,再開の時期ときっかけ,立地場所の選定,従業員の確保,活用した支援制度,各店舗や商店街のコンセプト,本設までの見通しに加えて,来客数や層,売り上げなど経営状況の震災前後の変化を整理した.その結果,スピード重視型や内装・コンセプト重視型など,業種によって「仮設」への考え方や今後の本設に向けた戦略が異なることを示唆した. (2)防災集団移転促進事業などの公的な復興事業を待たずして,自主住宅移転再建者(自ら情報収集し,移転を意思決定し,早期に土地や家屋を再建した被災者)16名を対象にヒアリング調査を行った.その結果,自主住宅移転再建者に共通する要件として,避難所に滞在するも短期で転出する,住宅と土地を2年以内に建設・購入している,市の復興計画や市独自の住宅再建支援とは無関係に再建計画を実行している,子供や高齢者の環境を優先して考える,早く決断しないとアパートや土地がなくなるという危機感を持っている,早期再建の結果,被災者と見なされなくなった一方で,住まいの早期再建により仕事や趣味などに充てる時間が増え,生活が安定するなどの傾向が見られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災後からの現場に根付いた調査を通じて,避難所や仮設住宅,地域住民らとの一定の信頼関係を築き,多大な協力を得ながら,当該年度の目的に即して調査研究を進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災から3年が経過し,復興事業の進展の一方,個人の住宅再建の格差も見られる.今後も被災地に根ざした丹念なインタビュー調査を継続すると共に,これまでの知見に基づく質問紙調査を設計・実施し,大規模災害後の生活や地域の再建プロセスの違いがもたらす効用(復興感)の解明を推進する.
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次年度の研究費の使用計画 |
自主住宅移転再建者に対するヒアリング及びアンケート調査を予定していたが,土地や家屋のみの再建で,未入居者が多い状況のため,被災者の再建動向に即して,次年度調査として計画を変更した. 次年度の予算使用計画は,まず,自主住宅移転再建者及び仮設商店主に対するヒアリング及びアンケート調査とその旅費に計上する(旅費,人件費・謝金,その他(テープ起こし)).また,被災地での復興状況(復興公営住宅,応急仮設住宅,防災集団移転促進事業,土地区画整理等のデータベース)をGIS上に整理し,分析するためのプラットフォームの構築やデータ入力機器の購入,作業に要する費用に計上する(物品費,人件費・謝金,その他(WebGISサーバーの使用・管理費)).さらに,学会や講演等により成果発表に努める(旅費).
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