研究課題/領域番号 |
24310135
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鷹野 敏明 千葉大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40183058)
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研究分担者 |
小林 文明 防衛大学校, 応用科学群地球海洋学科, 教授 (80202068)
高村 民雄 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (40272356)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 気象災害 / ゲリラ豪雨 / ミリ波レーダ / 積乱雲 / 自然災害予測分析 |
研究概要 |
本研究は、首都圏において、短時間の局地的豪雨を発生させる積乱雲発生過程を、高解像度の95GHzミリ波雲レーダFALCON-1でリアルタイムに捉え、これまでほとんど議論できなかった積乱雲の発生・成長過程や積乱雲のturretやtuftと呼ばれる100mスケールの雲の塊に至るまでの微細構造と内部運動を把握し、急激に発生・発達するメカニズムを明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、(1)千葉大上空に発生する積乱雲の定常観測、(2)房総半島および都内での移動集中観測、(3)積乱雲の総合解析、を実施する計画である。 これに沿って本年度は、(a)可視ビデオでの積乱雲の生成発達過程を網羅的に捉えて記録するために、横須賀と千葉にビデオカメラを複数台設置(物品費)、(b)ミリ波雲レーダFALCON-1を移動して観測できるようにするためにハード・ソフトの改良などを行い(物品費)、(c)総合解析に必要な上空の温度湿度を把握するために、簡易GPSゾンデ受信システムを導入した(物品費)。また、これら整備した装置などを用いて、(d)8月~9月にかけて房総半島の積乱雲多発生域である千葉県君津市の山中での集中観測を実施した(旅費、その他の経費など)。 この集中観測の結果、君津市山中の観測サイト上空で発生・発達する積乱雲を観測することができ、FALCON-1での詳細な観測と同時に、横須賀からのXバンド広域レーダと可視ビデオ・デジタル画像の取得に成功した。その結果、房総半島の山並みに沿って発生している多数の積雲から、積乱雲が発生・発達する様子が捉えられ、(1)積乱雲に発達する直前の積雲が数m/sの通常より大きい上昇速度を持つこと、(2)積乱雲頂の上昇速度が5~10m/s程度であること、(3)積乱雲頂付近で200~300mスケールのtuftと考えられる構造が速度幅10m/sに及ぶ内部運動を持つこと、などが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
房総半島君津市山中での集中観測で、積乱雲の発生・発達をミリ波雲レーダFALCON-1によって1例捉えることができた。また、横須賀の防衛大からの可視カメラとXバンドレーダによる観測で、狙い通り、周囲の積雲と積乱雲発生の様相も捉えられた。特に、従来他の研究では得られていなかった高い空間・時間分解能での強度およびドップラ速度データがFALCON-1により得られ、本研究の目的の達成に大きく近づいた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度の積乱雲発生・発達のデータを詳しく解析するとともに、さらに観測例を増やす。また、地域による積乱雲発生・発達の相違を調べることで、そのメカニズムを解明する。またそのために、内部物理状態を詳しく解明するために、FALCON-1とマイクロ波放射計のデータを統合して、雲粒子の粒径と分布を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度当初は「光学粒径計測装置」の購入を予定したが、雲レーダとマイクロ波放射計の観測データの解析を進めた結果、同装置を購入する代わりに上空の大気状態を測定するGPSゾンデ受信システムを導入して解析に役立てる方が精度を上げられる見込みとなった。よって基金助成金を次年度に残し、雲レーダのさらなる感度向上のために使用する計画である。
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