研究課題/領域番号 |
24310137
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
山田 孝 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (20333635)
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研究分担者 |
沼本 晋也 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (60324555)
土屋 智 静岡大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60197720)
権田 豊 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10303116)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 土石流 / 渓床堆積物 / パイプ流 / 現地観測 / タンクモデル |
研究概要 |
今年度は、三重県いなべ市藤原岳西之貝戸川での現地観測を継続して実施した。堰堤水抜き孔に超音波式水位計を設置し,得られた水位データを流量へ換算した。計測期間は2011年11月14日から2013年11月30日(ただし2012年9月19日~2013年4月28日は2012年台風16号による豪雨により機材が流出した為欠測)間で,そのうち流量にピークの見られた20降雨イベントを抽出した。この20降雨イベントを用いて流出解析を行い,短期の降雨‐流出特性を考察した。各降雨イベントについて勾配急変点法により流出率を求めた結果,8.3%~75.5%となり特にパイプの噴き出しが見られた降雨イベントにおいては流出率が最大75%と大きくなる傾向が見られた。さらに,パイプ流の噴き出しを観測した4事例においてパイプ発生時間の7日前までの実効降雨量を半減期1.5時間で求めると流出率との相関性が高くなり,その時の実効雨量は12.1~29.4㎜と小さい値となった。タンクモデルを2段にしてパラメータの最適化を行った。この2段タンクモデルは,1段目に2つの流出孔,2段目に1つの流出孔をもつ。各流出孔位置は上段上孔:71mm,上段下孔:30㎜,下段:0㎜であり,各流出係数は,上段上孔:0.01,上段下孔:0.017,下段:0.0082であり,各浸透係数は上段:0.12,下段0.6である。パラメ-タ-を最適化した3段タンクモデル同様に従来のタンクモデルよりも精度が向上する。西之貝戸川においてはより単純な2段タンクモデルで流量を再現できると考えられる。提案したタンクモデルを用いて2008年9月2日に土石流を発生させた豪雨時の流量を計算した(図‐3)。このときの流量は実測されていないが,流量の計算値は,画像判読による水抜き孔の流量の増減の変化とよく似た傾向を示す。前述の2段タンクモデルにより土石流発生時の土壌雨量指数を計算すると,従来の3段タンクモデルにより計算された土壌雨量指数と大きく違わないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地観測では、当初予定していた渓床堆積物のパイプ孔での水文観測施設の設置が、大雨による地形の変動のため、実施してきなかったが、それ以外のデ-タ収集、解析は予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現地観測の課題の一つとして、大雨時には、超音波式水位計を設置していない上部の水抜き孔からも伏流水が流出する場合が認められたたため、今年度は、超音波式水位計を増設してより精度の高い流量測定を行う予定である。大雨時でのパイプ流の流量デ-タを精度良く計測できることによって、より精度の高い土石流発生モデルへと発展させることができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は、大雨時の精度の高いパイプ流観測のために、渓床堆積物に形成されたパイプ孔から噴出する流量の時間的変化を計測するためのフリュ-ムや水位計の設置を予定していたが、大雨によってパイプ孔付近の地形が大きく変形し、当初予定していたスケ-ルでの観測が不可能となったため。 今年度は、別の箇所で形成されたパイプ孔を対象に、昨年度予定していたフリュ-ムと水位計の設置を行うことで、次年度使用額を使用する。
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