研究課題/領域番号 |
24310139
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小泉 圭吾 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10362667)
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研究分担者 |
小田 和広 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00185597)
平田 研二 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (40314364)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 土砂災害 / センサネットワーク / 表層崩壊 / 地すべり / ユビキタス / 集中豪雨 / 水分特性曲線 |
研究概要 |
国内、アジア諸国で頻発する自然災害による土砂災害を高精度に監視するための、多点式多段階型土砂災害監視システムを開発する。 1) 集中豪雨による表層崩壊発生メカニズムの解明:降雨パターンを考慮した、降雨浸透挙動を実測と実験・解析から明らかにする。これにより、ある区間を事例に、現状の降雨規制、規制解除の判断基準の妥当性を検証する。成果:現地計測データを基に、実験、解析により表層崩壊のプロセスに関する仮説を立て、その仮説を立証するための基礎的研究を行った。また、監視システムのテストサイトにおいて、降雨による現行の通行止、通行止め解除基準と新たに提案する規制基準の比較検討を行った。 2)地すべり地の観測手法の検討:無線センサネットによる地すべり監視のための観測手法の検討を行う。成果:無線センサネットワークによる亀裂変位観測と比抵抗探査を融合した地すべり監視手法の検討を行った。 3) 多点式多段階型アラートシステムの開発:「注意」、「警告」、「崩壊」のような多段階型の警報システムを検討する。降雨による浸透挙動と変形挙動のメカニズムを解明することで、降雨に伴う通行規制、規制解除、変状の発生などを知らせるための閾値の設定手法を検討する。成果:表層崩壊のプロセスに関する仮説を立て、その仮説を基に閾値の設定手法を提案した。 4)ユビキタスネットワークの構築:現行の一斜面に一監視システムを構築するのではなく、複数ののり面を1つのネットワークで管理することができる監視システムを開発する。成果:複数の表層崩壊および地すべり対象地をユビキタスネットワークにより管理できる監視システムのプロトタイプを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハードウェアの開発について、当初予定していた、集中豪雨による表層崩壊が多発する西日本を対象に、九州、中国、近畿地方から計5箇所の道路沿いのり面を選定し、当研究課題で開発した無線センサネットワークによる観測システムを設置し、観測を開始することができた。地すべりについては、四国地方の道路沿いのり面およびインドネシア・ジャワ島の鉄道沿い斜面において、それぞれ監視システムを導入し、観測を開始した。ソフトウェアの開発について、本研究課題である表層崩壊、地すべりなど、土砂災害全般を1つのシステムで観測できるユビキタスネットワーク型の災害監視システムのプロトタイプを開発できた。 また、昨年度、本年度の現場計測および実験結果から、表層崩壊発生の予兆現象と考えられる体積含水率の挙動を捉えることができた。この現象の再現性やメカニズムの解明は次年度の課題であるが、この成果が表層崩壊の未然予測に繋がる可能性が示唆された。 一方、周波数帯(920Mhz)の異なる無線モジュールのリリースが遅れていることから、こちらの実証実験は実施できなかった。ただし、このモジュールがリリースされた後には、現在開発した機器にピン互換できるよう設計していることから、遅延による影響は通信距離の実験のみに限定されている。以上のことから、今年度の研究成果は当初予定通り順調に進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、本年度の研究成果により、擬似飽和からの体積含水率の再上昇が表層崩壊の予兆を示している可能性を示した。次年度この仮説を立証するために、実験の再現性を検証するとともに、この現象のメカニズムと崩壊の関連性についての解明が必要となる。次年度の早い段階で、実験の再現性を確認し、この現象と崩壊までのメカニズムの解釈を行いたいと考えている。また、現在、本年度開発した観測機器を2013年11月以降に複数の現場に設置し、観測を進めている。2014年には梅雨前線や台風による豪雨の観測データを収集することが可能であることから、これらの観測結果と上述した実験、解析で得られる知見を用いて、新たな通行止、通行止解除手法の提案を行いたい。また、本年度開発した観測機器をより完成度の高いものへ改良すると同時に、多段階式の警告システムにより表層崩壊と地すべりに対してより有効性の高い監視システムへと改善する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
インドネシアでの地すべり監視に関する現地調査費およびシンポジウム開催費用として検討していたが、先方との日程調整の都合で次年度に延期となったため。 インドネシアでの地すべり監視に関する現地調査、およびシンポジウム開催のための費用として使用する予定である。
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