研究課題/領域番号 |
24310154
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
古田 享史 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40173538)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アクロメリン酸 / 受容体 / アロディニア / 分子プローブ / カイニン酸 / カイノイド |
研究概要 |
本年度は,アクロメリン酸が誘発するアロディニアに対してアンタゴニスト活性を示すPSPA-4のPETプローブである[11C]PSPA-4を合成し,トリチウム標識カイニン酸[3H]KAとともに,脳および脊髄組織切片を用いた詳細なin vitroオートラジオグラフィー解析を行った.その結果,[11C]PSPA-4と[3H]KAの結合領域が一致することを見いだした.PSPA-4はカイニン酸受容体に結合している可能性が考えられたが,[11C]PSPA-4の脳および脊髄での結合はカイニン酸受容体アンタゴニストで阻害されないことがわかった.さらに,高用量で発現するPSPA-4のアロディニア誘発作用は,カイニン酸受容体サブユニットのGluK1アンタゴニストおよびGluK1/K2アンタゴニストでは抑制されないが,GluK3およびGluK2/3アンタゴニストによって抑制されることが明らかとなった.また,GluK1サブユニットを主とするカイニン酸受容体が発現するDRGニューロンを用いたカルシウム応答実験の結果,カイニン酸とPSPA-4では細胞内カルシウムの上昇作用に違いがあることがわかった.以上により,PSPA-4はカイニン酸受容体と異なる受容体を標的とするか,もしくはカイニン酸とは異なるカイニン酸受容体活性化機構でアロディニアを誘発している可能性が示唆された.一方,新規カイノイドの合成では,ピロリジン環4位にアルキルチオ基を導入した化合物,前年度に合成した4位アルケニルおよびアルキニルエーテル型化合物のエピマー,3位修飾体のエピマー,さらにはPSPA-4の2位カルボキシ基の生物学的等価体の合成に成功した.合成した化合物についてはマウス髄腔内投与によるアロディニア作用と,神経障害性疼痛モデルにおける鎮痛作用に関する実験を検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規カイノイドとして,ピロリジン環4位のアルキルエーテル,アルケニルエーテル,アルキニルエーテル,アルキルチオ型修飾化合物は,その光学異性体も含めてほぼ計画通り合成することができた.さらに,既存受容体との親和性低減に向けた化合物として,カルボキシ基を生物学的等価体に変換した類縁体の合成にも成功した.また,陽電子放射核を導入したPETプローブである[11C]PSPA-4も,すでに確立した手法により安定的に合成することができ,トリチウム標識プローブとともに生化学的解析に活用して成果を得ることができた.研究当初の仮説と異なり,PSPA-4にアロディニア誘発に関わる分子標的が存在する可能性が高くなったが,これは新たな発見であり,発展的に次の研究に繋がるものと考えている.以上のように本年度の目標はほぼ達成することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画に従って研究を実施する予定であるが,放射性プローブを活用する実験に関しては新たな手法として質量分析によるMSイメージング法を検討する計画を立てている.同手法では取り扱いや合成に制限のある放射性プローブを必要としない利点があり,放射性プローブによる実験の一部を代替することができる.そこで,合成したカイノイド分子をMSイメージング実験に応用するため,イオン化効率のよい誘導体化法を検討する予定である.一方,標的受容体特異的カイノイドに関しては,25年度までに得られた知見を基に構造最適化を進める.特に,これまで導入が困難であったピロリジン環3位への官能基の導入に関して,新たな中間体を用いる手法の検討を行う.すでにモデル反応での有効性を確認しており,カイノイド合成にも適用できるものと考えている.
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