研究課題
特定遺伝子発現の化学的な機能分子による制御法の実現に向けて、申請者はDNAの遺伝子配列中の1塩基対の変異体の差異を認識する能力を持つ機能性ピロール(Py)-イミダゾール(Im)ポリアミドの研究開発を進めている。将来的に、培養細胞内の特定遺伝子の発現を機能性Py-Imポリアミドの配列特異性によって制御可能であることを証明し、遺伝子発現制御分子としての有用性を示していく。2013年度も島津製Fmoc固相合成機を活用し、合成条件を工夫、改善しながら、標的塩基配列に対応する機能性Py-Imポリアミドを合成、機能評価を進めた。その結果を以下に示す。(1)SAHA (suberoylanilide hydroxamic acid)をPy-Imポリアミドに連結させた誘導体によって、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)中の様々な遺伝子を特異的に活性化した。(2)ヒトテロメア配列を標的とする蛍光性タンデム型Py-Imポリアミドの合成、機能評価を行なった。(3)システインークロロアセチル基との間の反応を利用した環状Py-Imポリアミド二量体を合成した。(4)アルキル化能を有するPy-Imポリアミドについて、Kras遺伝子配列の1塩基の変異型を認識可能であることを報告した。Fmoc固相合成技術を基盤とする本研究の進展により、培養細胞中の特定遺伝子群に対して特異的に作用する機能性Py-Imポリアミドが開発できると考える。現在、SAHA以外のエピジェネチックスを制御する可能性のある機能性Py-Imポリアミドの新規合成を進めており、得られる知見、実験結果をまとめ、論文として投稿する予定である。
2: おおむね順調に進展している
論文として報告する作業が遅れている研究もあるが、全体として研究の核となる研究知見は見出されており、機能性Py-Imポリアミドの研究を広く展開することができた。二年目の研究実績として、概ね順調に進展していると考える。
CAG繰り返し配列を標的とするPy-Imポリアミドの合成、機能評価の結果を論文として報告する。加えて、次世代シークエンサーを用いたDNA塩基配列認識能評価の結果得られている知見、実験結果も論文としてまとめていく。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Chem. Eur. J.
巻: 20 ページ: 752-759
10.1002/chem.201302482
巻: 20 ページ: 1310-1317
10.1002/chem.201303295
Sci. Rep.
巻: 4 ページ: 3843
10.1038/srep03843
Nucleic Acids Res.
巻: 41 ページ: 4724-4728
10.1093/nar/gkt123
Bioorg. Med. Chem.
巻: 21 ページ: 4201-4209
10.1016/j.bmc.2013.05.002
巻: 21 ページ: 5436-5441
10.1016/j.bmc.2013.06.005
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 52 ページ: 13410-13413
10.1002/anie.201306766
J. Am. Chem. Soc.
巻: 135 ページ: 16468-16477
10.1021/ja406737n
http://kuchem.kyoto-u.ac.jp/chembio/