研究課題
原核微生物は、温度や光など、また栄養状態など刻々と変化する環境の中で生活している。そのため、外界の変化に対応するため、細胞内にシグナルを伝達し外界の変化に応答する環境応答と呼ばれるシステムを持つ。有用二次代謝産物の生産菌として著名な放線菌が、最も多く持つのは、TetR型転写制御因子を介した環境応答系であり、477種知られている放線菌の各種は、平均して70個のTetR型制御因子を有する。現在までに、放線菌においては、112種のTetR型制御因子に関して研究がなされ、その機能が推定されてきている。しかし、これら制御因子に結合するシグナル分子が同定された報告は極めて少なく、わずか14のリガンドが報告されているに留まる。同定されたリガンドの数が少ない要因の一つとして、菌体中でのリガンドの絶対量が少ないことが挙げられる。たとえば、我々が同定したエバノライドは、2,000Lの培養液からわずか1.2 mgしか単離できない。このため、迅速なリガンド同定には、効率的なリガンド補足法が必須となり、本研究では、大腸菌で大量発現させた組換え型制御因子をアフィニティ担体としてリガンドを選択的に濃縮して溶出する手法を開発し、その後高速液体クロマトグラフィーでリガンド候補を選別し、LC-MS/MSを用いて同定するという研究手法の開発に成功した。本研究では、全ゲノム配列が決定され、殺中剤として著名なアバメクチンの生産菌であるStreptomyces avermitilisを対象として、コードされる全75種のTetR型制御因子について検討した。アミノ酸や糖などありきたりの化合物をリガンドとするものを除き、未同定のリガンドと結合して機能を発揮すると思われる制御因子について重点的に研究を進めた結果、3,4-ジヒドロキシブチルアセテートなど、新規なリガンドを同定するに至っている。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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