研究概要 |
沖縄県の海岸で、干潮時に潮間帯の海洋シアノバクテリアを採集した後、有機溶媒による抽出で得た抽出エキスに対して生物活性試験を行った。活性の強い抽出物を分離・精製し、新しい活性物質を数種類得た。トムルリンは2個のチアゾール環を含むポリケチドで腫瘍細胞に対して強い増殖阻害を示す。環状ペプチドと思われる活性物質については、現在構造解析を進めている。また、ビセリングビアサイドの新しい類縁体を5種類単離し,その化学構造を決定したごこれら類縁体の生物活性を評価し,構造活性相関をある程度明らかにすることが出来た。さらに,その作用機構を解析する研究を進めたところ,ビセリングビアサイド類が細胞内のカルシウムイオン濃度を上昇させる作用をもつことが分かった。構造活性相関研究の知見に基づき,ビセリングビアサイドの蛍光標識体を合成し,本研究で導入した蛍光顕微鏡により細胞内の動態を観察した結果,ビセリングビアサイド蛍光標識体は細胞内の特定の小器官に局在することが分かった。さらなる解析が必要であるが,ビセリングビアサイド類は細胞内の小胞体に局在し,小胞体ストレスを引き起こし,アポトーシスを誘導するものと推定している。今後,小胞体マーカーを用いた共染色や小胞体ストレスマーカー遺伝子の発現に及ぼす影響を調べていく。また、ビセリングビアサイドのビオチン標識体を合成し,天然物と同様の活性を保持していることを確認した。今後,標的生体分子の探索を進める。ビセブロモアミドについては、微量の天然類縁物質の存在を確認したので,さらにスケールを上げて抽出分離を行い,化学構造を明らかにしたい。さらに,これまでに分かっている構造活性相関研究の知見に基づき、ビオチン標識体の合成に着手した。合成が完了した後,これを用いて標的生体分子を探索する。
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