研究課題
異常スプライシング誘導因子としてのHMGA1a蛋白質の構造を解析するプロジェクトにおいては、武藤裕教授(研究分担者)との共同研究で、HMGA1a : U1-70K : RNA複合体の構造を解明するのが当初の目的であったが、HMGA1a蛋白質は不溶性が高く結晶ができなかった。しかし、HMGA1a蛋白質のRNAに対する結合状態に関して、超高感度等温滴定型カロリーメータ(ITC)やES質量分析を駆使して、興味深いデータを得ることができた。HMGA1aはプレセニリン2(PS2)遺伝子の転写産物内の配列(PSseq)とエストロゲン受容体(ERα)遺伝子の転写産物内の配列(ERseq)に結合している事がわかった。これらの配列との複合体形成についてITC解析では、HMGA1a はPSseqに結合したが、ERseqとは結合しなかった。ES質量分析の結果では、2分子のPSseq分子が1分子のHMGA1に結合しており、ERseq分子には、HMGA1aが明確な結合を示さなかった。HMGA1が異常スプライシングを誘導しているPS2以外の標的遺伝子を探索するプロジェクトでは、ERα遺伝子の転写産物に配列特異的に結合することを見出したが、HMGA1結合配列を有する「おとり」RNAを安定発現させたMCF-7細胞は、ヌードマウスにおいて腫瘍増殖をさらに増強させた。これは、抗エストロゲン剤抵抗性の乳癌細胞株においてERα46蛋白質の発現が低下している報告と合致する。本研究では「おとり」RNAを用いて癌遺伝子産物のRNA結合を阻害することが、必ずしも治療につながる成果ではなかったが、HMGA1aの核移行配列を含む「おとり」RNAの安定発現乳癌細胞株が、実験動物においても有効に発現し効果を観察することが分かったのは有意義である。さらに、エイズウイルス(HIV)のスプライシングにHMGA1aが関与している実験的根拠が得られている。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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