研究課題
本年度も引き続き新規骨疾患治療薬の開発を行った。昨年度までに、TPh AによるRANKL誘導性の破骨細胞分化抑制がPirinの阻害とは独立していることを明らかにした。そのことを踏まえ、種々の誘導体を合成し、より強力な阻害活性を有する阻害剤の取得を試みた。マウス骨髄由来マクロファージ細胞を用いて試験した結果、13種の阻害剤に破骨細胞分化抑制活性を見出したが、なかでもSUK-39はTPh Aに比べてIC50値が1/3程度であり、最も阻害効果が良いものであった。RANKL刺激で細胞内の様々な因子が活性化されるが、検討の結果、SUK-39とTPh Aの阻害機序が異なっていることが示唆された。具体的には、マウス骨髄由来マクロファージ細胞にRANKLとSUK-39を共処理することで、DC-STAMPのmRNA量が著しく抑制されていた。DC-STAMPは破骨細胞の融合に必須なタンパク質であることから、SUK-39処理の細胞を詳細に観察した。その結果、TRAP陽性でありながら融合が阻害されている細胞があり、SUK-39の分化阻害効果はDC-STAMPの抑制が主要因である可能性が考えられた。そこで、SUK-39の標的タンパク質を同定するために、SUK-39固定化ビーズを使用した結合タンパク質の同定、SUK-39処理後のタンパク質発現量の網羅的解析による標的タンパク質の予測などを並行して行っており、SUK-39の標的タンパク質の同定と新たな破骨細胞分化シグナル因子の発見につなげる。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は合成した種々のTPh A誘導体の中で、SUK-39に最大活性を見出すことに成功した。また、SUK-39はTPh Aよりも強い破骨細胞分化阻害活性を有していたため、有用な骨疾患治療薬となり得る可能性が考えられる。さらに、TPh Aと作用機序が異なっていたため、破骨細胞分化を評価するうえで新たな分子標的を提示できる可能性がある。以上のことより、SUK-39の治療薬として、また、新たな破骨細胞分化シグナルを提示できる可能性があることから研究計画は予想以上に進展しているものと考えられる。
本研究課題はPirin阻害剤を用いることを対象としていた当初とは異なり、TPh A誘導体を使用することとした。TPh AがPirinを標的としていない可能性については、すでに申請書の中で考えており、対応も誘導体を合成・使用することでスムーズに行うことができた。最終年度では、SUK-39の結合タンパク質について様々な手法(アフィニティビーズ、タンパク質の発現パターンによる網羅的解析など)で探索を行う。
購入予定であった高額研究試薬が容易かつ安価で合成可能であったため。および、使い捨ての培養器具からガラス製品を購入し、節約を試みたため。最終年度にあたり、抗体やリコンビナントタンパク質などの購入に充てる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Oncology Letters
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10.1016/j.febslet.2013.09.017
http://www.applc.keio.ac.jp/~simizu/