研究概要 |
外来侵入種の在来種や在来生態系への影響は,生物多様性保全の観点から深刻な問題となっている.外来侵入種と在来種の間に十分な生殖的隔離がない場合,両者間で交雑が繰り返し起こることによって,在来種の遺伝子プールが汚染される可能性がある.雑草性のタデ科ギシギシ属では,ヨーロッパ原産のエゾノギシギシやナガバギシギシが在来のギシギシ属植物との間で繰り返し交雑を起こしていると推察される.本課題では,外来侵入種による,在来種の遺伝子プールの汚染がどれくらい進行しているかを明らかにし,外来侵入種から在来種を遺伝汚染から守るための方策を考案することを目的とする. 本年度は,主に在来の絶滅危惧種ノダイオウとエゾノギシギシの2種が交雑を起こしていると推定される青森県青森市の集団について,野外調査およびフローサイトメトリーによる倍数性の解析により,この集団における雑種形成について検討した.この集団では,ノダイオウとエゾノギシギシは側所的に生育しており,特にノダイオウの純粋系統はヨシ原の中に限ってみられた.しかし,ヨシ原の個体にもエゾノギシギシとの交雑の結果生じたと考えられる個体が見られ,生態的な隔離は十分ではないと考えられた.本年度中に,この集団に生育する全ての個体の位置的情報を記録しておいたので,これらの両親種の純粋な個体や交雑と推定される個体の生態的挙動について,経年観察を行う予定である.また,引き続き,交雑がどの程度の割合で,どのように遺伝的な汚染を引き起こしているかを遺伝子マーカーによって明らかにする必要があると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年4月付けで現職に異動となり,研究室も移動した.そのため,実験室および研究室のセットアップなどで最初の数ヶ月は研究のスピードが遅くなり,その分だけ,当初の計画よりも進捗状況が遅れている.
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