研究課題/領域番号 |
24310171
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
濱崎 活幸 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (90377078)
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研究分担者 |
北田 修一 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (10262338)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 保全生物 / 生物多様性保全 / 在来種保全 / 生物地理 / 集団遺伝 |
研究実績の概要 |
絶滅危惧種でありながら食用として利用されている陸生大型甲殻類ヤシガニと天然記念物でありながらペットとして流通しているオカヤドカリ類の保全に重要な生息域・場所を把握することを目的に、以下の4つの研究課題に取り組んだ。 1.全国レベルでの地理的分布の把握:千葉県房総半島で分布調査を継続実施し、越冬稚ガニの分布を再確認した。さらに、与那国島で調査を実施し、ナキオカヤドカリが優占種であることが明らかとなった。 2.野外サンプリングによるメガロパと初期稚ガニの上陸・生息場所の把握:西表島で分布調査を実施し、前年度までの石垣島と同様にコムラサキオカヤドカリの成体と稚ガニがマングローブ等の汽水域に特異的に分布することを確認した。 3.分布を規定する環境要因(温度・塩分)と上陸・生息場所に対する選択性の実験的検討:卵(オオナキ・コムラサキオカヤドカリ)、幼生(オオナキ・ムラサキ・オカヤドカリ・ヤシガニ)、稚ガニ(ムラサキ・オカヤドカリ)の温度別培養・飼育、低温耐性実験を行い、各種の温度適応は地理的分布と対応することが示唆された。幼生の塩分耐性実験(ムラサキ・オオナキオ・ナキ・オカヤドカリ)では、オカヤドカリの塩分耐性が強いことが確認され、河川上流でふ化が起こるものと推察された。また、ムラサキオカヤドカリとオカヤドカリのメガロパの上陸は隠れ家の存在で誘起されること、コムラサキオカヤドカリに加え、ナキオカヤドカリのメガロパでも、低塩分が上陸を惹起するることが判明した。 4.日本固有種と考えられているムラサキオカヤドカリの遺伝的集団構造の把握:これまで入手した石垣島、沖縄本島、高知県大月町、鹿児島県宝島、東京都八丈島、小笠原父島から得たサンプルのmtDNA分析を実施し、集団遺伝学的解析を行った結果、父島の個体群が他の個体群と有意に遺伝的に異なることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各課題とも当初計画通りに進展している。全国レベルでの分布調査では、房総から与那国まで調査し、分布優占種を明らかにした。野外サンプリングによるメガロパと初期稚ガニの上陸・生息場所の把握では、コムラサキオカヤドカリの分布特異性を異なる調査地で嗚呼くすることができた。分布を規定する環境要因や上陸・生息場所に対する選択性実験では、全種でデータが得られ、マクロな分布(温度)とミクロな分布(塩分)特性を種間比較できるようになった。さらには、父島のムラサキオカヤドカリは遺伝的に異なる集団傳あることが明らかになり、貴重な個体群であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
分布を規定する環境要因や上陸・生息場所に関する選択性実験では、各種最低2尾の親からふ化した幼生を使用し、データを得ることを目標にしており、最終年度では不足するデータを得るよう努める。全国レベルの分布とメガロパ・初期稚ガニの上陸・生息場所の把握に関しては、これまでに得られたデータを整理し、室内実験の結果と合わせて、マクロな分布とミクロな分布特性の種間比較を試みる。集団遺伝学的研究に関しては、データ解析を進め、学術論文として投稿する。
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