研究課題/領域番号 |
24310173
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
住田 正幸 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10163057)
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研究分担者 |
倉林 敦 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教 (00327701)
井川 武 広島大学, 大学院・理学研究科, 特任助教 (00507197)
ISLAM M.Mafizul 広島大学, 大学院・理学研究科, 特任助教 (40598976)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 両生類 / 絶滅危惧種 / 遺伝的多様性 / 保全 / 飼育下繁殖 / マイクロサテライト / MHC / 精子凍結保存 |
研究概要 |
(1)マイクロサテライト(SSR)と主要組織適合遺伝子複合体(MHC)マーカーの開発。4種の南西諸島産絶滅危惧両生類(イシカワガエル・オットンガエル・ホルストガエル・イボイモリ)について、SSRマーカーを開発した。また、イボイモリでMHCクラスII遺伝子を単離した。 (2)野外集団からのサンプリング。上記の4種について、分布域を網羅するできるだけ多数の集団からサンプリングを行い、上記マイクロサテライトマーカーを用いて、各種における微細集団構造を解明した。その結果、アマミイシカワガエルにおいては遺伝的分化のパターンを作り出す環境要因を特定できた。イボイモリについては、沖縄島と奄美大島にてメタ集団が入り混じった複雑な構造が明らかとなり、これらは過去の環境変動による隔離と、比較的最近の移動分散によって形成されたと考えられた。また、ホルストガエルとオットンガエルにおいては、共通したアリルが見られず、島喚化による隔離とその後の遺伝的分化が確認された。さらに、ホルストガエルについては、沖縄島と渡嘉敷島の間に明確な分化が存在し、沖縄島北部の集団内にもメタ集団が存在するという、階層的な集団構造が見られた。 (3)種ごとに適切な人工受精法と飼育法の確立。上記4種については、人工受精または自然繁殖によって、飼育下での繁殖に成功した。また飼育条件の最適化によって、イシカワガエルでは、人工繁殖個体から飼育下での自然繁殖によって2世代目が誕生した。 (4)精子凍結保存法の確立。本年度は、絶滅危惧種ではなく、ニホンアカガエルを用いて、液体窒素を一切使わず、-80℃の超低温槽を用いた精子凍結保存を実施した。その結果、27時間から1ヶ月のいずれの保存期間においても、正常卵割する卵が観察でき、-80℃保存精子にも受精能が残っていることが明らかになった。 (5)遺伝マーカによる血縁度測定と種親選定による計画的交配。種親候補として、野外採集個体や飼育下繁殖個体について、マイクロサテライトマーカーを用いてジェノタイピングし、血縁度の異なる雌雄を用いて人工交配を行ったところ、近親交配1世代目においても近交弱勢の影響が示唆された。また、遺伝的影響の指標には、子孫の予測ヘテロ接合度が有効であり、絶滅危惧種の継代維持にはMK交配法が望ましいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いずれの項目についてもおおむね計画通りに実験が進展しており、既にある程度の成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、ほぼ申請書に記載の計画で研究を推進していく予定である。特に以下の点については、昨年度の成果を検討しながら、重点的に実験を進めていく計画である。 マイクロサテライト(SSR)と主要組織適合遺伝子複合体(MHC)マーカの開発:南西諸島産絶滅危惧両生類(アマミハナサキガエル・オオハナサキガエル・コガタハナサキガエル・ハナサキガエル・ナミエガエル)についても、SSRマーカを開発し、野外で採集したサンプルについてジェノタイピングを行い、各絶滅危惧両生類について、集団内の遺伝的多様性と、集団間の遺伝的構造を解明し、絶滅リスクを評価する。種ごとに適切な人工受精法と飼育法の確立:各種各集団について、人工受精と飼育条件の最適化を目指して、各種に適切な飼育法を確立する。精子凍結保存法:イシカワガエルを用いて凍結保存液の至適化を行い、各保存試薬の効率を評価するとともに、3ヶ月・半年・1年以降(H27年まで)に人工受精を行い、凍結保存可能期間を明らかにする。遺伝マーカによる血縁度測定と種親選定による計画的交配:飼育下繁殖個体を用いて、血縁度の異なるいろいろな組合せで人工交配を行い、それぞれの子孫について生活力を検証し、飼育下で遺伝的多様性を維持できる継代飼育システムを確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は精子凍結保存実験で、液体窒素凍結保存容器を購入せず、-80℃の超低温槽で実験を行ったため、その経費を今年度に繰り越した。今年度は、昨年度の実験結果を検討しながら、本容器を購入する必要が有れば、今年度の研究費と合算して使う予定である。
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