研究概要 |
本研究の目的は,1級河川球磨川河口約20kmに位置する荒瀬ダムの撤去事業に伴う土砂移動のインパクト・レスポンスに着目して,干潟生態系における物理基盤の機能評価・生物多様性維持機構を解明することである.これまでダムに蓄えられた土砂が流れることにより,短期的には河口域に大規模な土砂供給が起こり,その後は土砂供給量が減少するという「流砂量の変化」が起こることが想定される.河川の流砂の量と質を追跡するとともに,それに伴う生物分布の変化を明らかにすることで,未解明である干潟生態系の維持機構を特定することが本研究の最大の狙いである。 平成24年度は,ダム撤去前後の物理基盤とそれに伴う生物の変化を明らかにすることを目的とした調査を行った.まず,物理基盤の質的量的変化を追跡するために、球磨川河口干潟に供給される浮遊土砂量を濁度計を用いた継続的観測および粒径分布の観測を行い,球磨川河口域一帯における土砂分布とその動態を明らかにした.他に,生物生息場を規定する環境要因を特定するため,詳細スケールでの物理要素を把握した.物理基盤情報としては,こkじょ数年間の出水頻度の上昇に伴い,河口部から海域にかけての河床材料の砂質化傾向が明確となった点などが特筆すべき成果と言える. 生物に関しては,魚類・ベントス類について河川内を広域的に調査し,縦断分布を特定するとともに,干潟の横断方向の調査も行い,魚類群集・ベントス群集構造を解明した.また,幾つかの干潟の典型的なカニ類について,ミクロハビタットレベルでの調査を実施し,その生息条件を特定した.主要生物については,窒素・炭素安定同位体分析に供するための分析試料収集を行った.生物相調査,物理基盤調査ともに優れた情報収集ができたため,生物群集構造の予備解析を行うことができた.特に,河口域一帯に定住するハゼ亜目魚類とカニ類については網羅的な調査を行い,それら2分類群を使った河口域生態系の評価系を確立できた点が特筆すべき成果と言える.
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今後の研究の推進方策 |
物理基盤,生物分布とも,平成24年度と同様の調査を継続的に実施する.そして,生物分布と環境傾斜との関係性をするために直接および間接法による解析を実施する.また、平成24度に明らかとなった主要生〓〓広域スケールの情報に基づいて各種の分布モデルを,また,詳細スケールの情報に基づいて各種の生息場モデルを構築する.窒素・炭素安定同位体分析については,食物網構造内のコミュニティーワイドを特定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の基金の繰り越し分を含め,消耗品,調査旅費・成果発表旅費でその多くを使用する予定である.人件費,分析外注費やレンタカー代などにも研究費を使用する予定である.以下に,その詳細を示す.調査に必要な観測機墨は初年度に購入済みで,平成25年度には備品費は必要ない. 物品費(全て消耗品)・・・¥850,000,旅費・・・¥2,936,378,人件費・謝金・・・¥250,000,その他(外注分析など)・・・¥750,000
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