研究課題/領域番号 |
24310176
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
家田 修 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (20184369)
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研究分担者 |
今中 哲二 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (90109083)
城下 英行 関西大学, 社会安全学部, 助教 (10581168)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原発事故 / チェルノブイリ / アイカ / 福島 / 放射能汚染 / 地域 / 社会防災 / 原子力 |
研究概要 |
本研究は福島原発事故による影響を自然や人体に関してだけでなく、地域自体を変容させているという視点から総合的に研究することを目的としている。 平成25年度は当初の予定通り、ハンガリー、ウクライナ、ベラルーシでの現地調査を行ない、実態調査を推し進めた。具体的には現地の専門家(ベラルーシ、ウクライナ、ハンガリー)、原子力施設(ベラルーシ)、NGO(ベラルーシ、ウクライナ、ハンガリー)、自治体関係部署(ベラルーシ、ハンガリー)、防災局など関係省庁(ハンガリー)への聞き取り調査を行なった。そうした中で、ハンガリーのヴェスプレーム大学の放射線化学生態研究センターとの連携体制を確立できたことは、予想外の成果であり、ここを起点に東欧ロシアの関係研究者とのネットワークが広がった。 福島県内の避難者からの聞き取り調査、および人体への放射能の影響に係わる基礎的調査を実施した。また被災地における復興の在り方をめぐる公開でのシンポジウムを、関連研究成果と一体化させた講演会及びワークショップを兼ねて福島市で11月17日に青少年会館において開催した。飯舘村を中心に文化財の保全状態に係わる調査を行ない、地区会館や村内の神社に重要な資料が保存されていることを発見した。 初年度と二年度の研究成果を基に、中間的な研究のまとめとして国際シンポジウムを「Catastrophe and Resurrection: New Approaches to a Changing Slavic Eurasia 災難と再生:変動するスラブ・ユーラシアへの新しい研究視角」と題して、平成25年12月12-14日に北海道大学スラブ研究センターで開催した。また、北海道大学及び北海道内において大学=市民連携講座を、自治体やNGOと協力して開催した。その際には、市民の活動と本研究での調査結果や研究成果を結びつける工夫がなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現地調査を繰り返す中で、当初は見えていなかった新しい研究可能性がいくつか生まれたことが、理由として挙げられる。 一つはハンガリーのヴェスプレーム大学の放射線化学生態研究センターとの連携体制の確立である。このセンターは東欧を中心に欧州やロシアにおいて長期にわたる研究ネットワーク事業の蓄積を持ち、本研究に対して重要な国際研究連携の可能性をもたらした。 二つ目は福島事故の被災地研究に関連することである。すなわち、飯舘村での調査において原発事故前に優れた郷土史及び郷土文化研究が行なわれていたことがわかり、その分野での薫陶だった研究者(東北学院大学名誉教授岩本由輝氏)の協力を得られることになった。岩本氏の協力により、地域としての変容過程を事故前と事故後において、明瞭に比較対照することが可能となった。 三つ目は、ウクライナとベラルーシにまたがるポレシア研究との連携である。ポレシア研究との連携が確立したことで、チェルノブイリ事故後における地域変容を、事故前と事故後を比較する実証的研究を基に、進め始めることが可能となった。ただし、最近のウクライナ政治情勢の悪化で、今後の現地調査はやや不透明になっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はこれまでと同様、汚染事故に関連する国内(福島)と海外(ウクライナ、ベラルーシ、ロシア)での現地フィールド調査、及びNGO、自治体、関係省庁等での聞き取り調査を継続的に行なう。 今年度の5月21-23 日に予定されているハンガリーでの放射線化学生態学研究学会で、社会防災学と放射能汚染の複眼的視点から、本研究成果の中間的な取りまとめとなる内容の研究発表を行ない、批評を受ける。 12月に北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターで行われる国際シンポジウムにおいて、総括的な中間的取りまとめとなるパネルを組織する。 東京で研究成果発表を兼ねたワークショップを市民向けの講演会として開催する(国学院大学、5月10日)。また、北海道大学において大学=市民連携の公開講座を引き続き実施する。年間で8回ほどを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額のうち24,500円は、3月分のwebサイト管理・更新費用の支払いが4月になる為に生じたものである。残る金額は、3月に開催予定だった研究会およびシンポジウムが4月5月に延期になった為、次年度使用することとなった。 24,500円は、3月分のwebサイト管理・更新費用の支払いに充てる。残る金額は、4月5月に開催の研究会およびシンポジウム参加旅費に使用する。
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