研究課題/領域番号 |
24310180
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
内海 成治 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (80283711)
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研究分担者 |
阿部 健一 総合地球環境学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (80222644)
高橋 真央 甲南女子大学, 文学部, 講師 (50401609)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際緊急人道支援 / 難民 / アフリカ / 教育協力 / ソマリア / 東ティモール |
研究概要 |
本研究は紛争が継続している東アフリカにおいて、その影響を最も強く受ける子どもの状況を把握し、国際緊急人道支援および復興開発支援のあり方を再検討することである。なぜならば今後の国際協力は子どもを見据えたものになるべきだからであり、そのためには子どもを国際協力において主流化することが必要である。 平成25年度はケニアと東ティモールでの現地調査を行い、あわせて国内関係機関での聞き取り調査を行った。ケニアではナイロビにおいてJICA事務所およびケニアにおいて教育プロジェクトを実施している国際NGO、アフリカ教育開発市民の会(CanDo)とピースウインズジャパン(PWJ)について調査を行った。CanDoはナイロビの東の半乾燥地のムインギ県で小学校建設支援を住民参加による手法で支援を行っている。参加型開発は現在の社会開発において主流になりつつあるが、こうした支援の住民と子供に与える影響を検討した。また、多くの日本の若者をインターンとして採用し村人との共同作業に参加し、貴重な学びの機会を提供している。 PWJはケニアのガリサ県ダダブのソマリア難民キャンプにおいて学校建設や住宅建設支援を行っている。今回は治安の問題もあり担当者にナイロビでインタビューを行った。この結果を受けて次年度はソマリア難民の調査をダダブのキャンプ内とアメリカに第3国定住したソマリア難民の家族のインタビューを行う予定である。 東ティモールではユニセフの行っている保健支援とPWJが行っているコーヒーファートレードを通じた子ども支援を調査した。PWJの活動は継続敵に調査を行っているが、今回はコーヒー農家の経済状況と子どもの教育の関係を調査した。 こうした結果は、放送大学の番組「国際ボランティアの世紀」のTVプログラムおよび教科書で取り上げ、課題を紹介した。また、アフリカ教育研究フォーラムでの発表を通して広く課題を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東アフリカのケニアは比較的治安が安定しているため今年度も現地調査を行うことができた。子ども支援を行っている二つのNGOへの丁寧な調査を行うことができた。しかしながら昨年度実施し、今年度も継続して実施する予定であった南スーダンの調査は内戦が勃発したため入国が困難になった。特に調査を予定していたジョングレイ州では州都のボーが激戦地となり、昨年度調査基地としたのPWJの現地オフィス事務所は焼失した。そのため今年度はナイロビにおいてPWJの現地駐在員にインタビューを行った。南スーダンの調査は今後も難しいため、昨年度ナイロビで行ったソマリア難民の予備調査を次年度本格的に行うこととし、今年度は聞き取り調査を行った。その結果次年度はガリサ県ダダブのソマリア難民キャンプでの教育支援や子ども支援の調査を視野にいている。 また、50万人を超えたソマリア難民の第3国定住が進められていることから、第3国におけるソマリア難民の子どもの調査の必要があると思われる。その為、次年度はアメリカに移住したソマリア難民の調査を実施することも視野に入れていれたい。 東ティモールでの調査は順調に推移し、フェアートレードによる経済的支援が子どもの教育等の支援に十分につながっていないことがわかってきた。そのため、経済的支援がどのような契機で子どもへの支援となるのか一段と深い調査研究が必要なことが分かった。これは子どもの主流化にとって非常に重要な視点であり、東アフリカでの調査にも大きな示唆を与えるものである。 成果として『国際ボランティアの世紀』(放送大学)のテレビ番組と教科書に本研究の成果を反映させたほか、学会(アフリカ教育研究フォーラム)において研究発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は南スーダンでの内戦勃発により、南スーダンでの現地調査は不可能となった。南スーダンの治安は改善の様子がないため、南スーダンでの現地調査は見送り、ケニア内のダダブのソマリア難民キャンプでの調査を行う予定である。すでに50万人を超えたダダブのキャンプも治安が良くないため、100キロ離れた国連支援キャンプにおいてNGOや国際機関の担当者およびソマリア難民へのインタビューを行う予定である。 また、長引くソマリア内戦によりソマリア難民は増加しているため第3国定住が進められている。特にアメリカのミネアポリスやソルトレイクには多くのソマリア難民が定住している。定住難民の子どもの状況を調査し、緊急人道支援の課題を検討することを考えている。 東ティモールでの調査は継続し、東アフリカでの状況を補完することを考えている、これまで「難民化効果」として、被災した家族や難民化した家族は教育熱が高まり、子どもの教育にこれまで以上の努力をはらいことが実証されている。しかし、東ティモールでは、この状況があまり見られない。アフリカとアジアの違い、経済的発展段階の違い、宗教文化の違いなど多々あるが、これまで普遍的と考えてきた「難民化効果」の発言過程を再検討する必要がうかがえる。そのため東ティモールでの教育調査をマクロミクロで精密に行う必要がある。その結果をアフリカでの状況、ソマリア難民のアメリカでの状況と照らし合わせて改めにて難民化効果について検討する予定である。 次年度はこうしたことから分担研究者を増やし、研究集会を開催するとともに学会でのこれまでの調査結果の発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度実施予定であった南スーダンでの本格調査が南スーダンの内戦勃発のため実施不可能となった。特に調査予定地のジョングレイ州の州都ボーは戦闘が激しく、調査基地として予定していたNGOのピースウインズジャパン(PWJ)事務所は焼失した。南スーダンの状況に関してはナイロビにおいてPWJの駐在員からの聞き取り調査を行った。こうした状況から南スーダンへの旅費および関連費用を次年度に繰り越すことにした。 南スーダンの治安状況は好転の見込みがないため、26年度も入国は不可能と思われる。そのため南スーダンでの調査にかえて、ケニア国内のソマリア難民の調査を行うこととしたい。これには2つの調査を検討している。 ひとつはケニア・ガリサ県内のダダブ難民キャンプにおける教育支援や子どもへの支援の調査、これはダダブへの難民支援の国連キャンプに赴き国際NGOや国連機関の関係者へのインタビュー調査である。二つ目はアメリカに第3国定住したソマリア難民の子どもの調査である。調査地としてはアメリカにおけるソマリア難民の集住地区であるミネアポリスとソルトレイクを予定している。そのためアメリカのソマリア難民調査に経験のある研究者を新たに分担研究者に加えることを検討している。
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