研究課題/領域番号 |
24320004
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
榊原 哲也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20205727)
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研究分担者 |
西村 ユミ 首都大学東京, 健康福祉学部, 教授 (00257271)
浜渦 辰二 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70218527)
村上 靖彦 大阪大学, 大学院・人間科学研究科, 准教授 (30328679)
福田 俊子 聖隷クリストファー大学, 社会福祉学部, 准教授 (20257059)
小林 道太郎 大阪医科大学, 看護学部, 講師 (30541180)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 現象学 / 志向性 / 緩和ケア / 障害者ケア / ACT / ソーシャルワーカー / 教育実践 / 看護経験 |
研究概要 |
看護・医療・介護・福祉など広く「ケア」に関わる領域で近年注目を集めている〈現象学をベースにした質的研究〉について、事象に即した「ケアの現象学」の「具体的展開」を通じてその方法論の明確化を目指すとともに、ケアの現場との連携により理論と実践の両面での「組織化」を図ることを目的として、個別研究と共同研究を行った。 個別研究では、代表者榊原哲也は、フッサール現象学の視点からケアの志向性の構造を明らかにするとともに、腎不全医療に従事する看護師の経験を現象学的に解明する準備作業を行った。分担者西村ユミは、看護師たちの協働実践をフッサールの志向性概念を手がかりに捉え直し、現象学の概念が、具体的なケアという(協働)実践の探究において、いかなる機能を持ちうるのかを検討した。分担者守田美奈子は、緩和ケア病棟の看護師9名に実施したインタビューデータの中で、緩和ケア病棟における治療の意思決定に関する看護師の経験について分析・検討した。分担者和田渡は、自身の教育実践の現象学的な反省と教育に関する文献研究にもとづき、教育におけるケアの問題と、教師と学生の関係に伴う諸問題について考察をすすめた。分担者浜渦辰二は、地域における医療・看護・介護・福祉の専門職と患者・施設利用者・家族を含めた一般市民との対話のなかから、ケアをめぐる問題を汲み上げ、現象学的記述というミクロな次元から、ケアを取り巻く状況・組織・システムといったマクロな次元まで射程に入れた考察を行った。分担者村上靖彦は、訪問看護など数名の看護師にインタビューを取り、口頭発表と論文でその分析を発表した。分担者福田俊子は、精神保健福祉領域のソーシャルワーカー13名にインタビュー調査を実施し、分析を進めた。分担者前野竜太郎は、末期がん患者に10か月間向き合い、家族としてできるケアを行う当事者として、ケアそのものにせまり、その本質を明らかにしようと試みた。分担者西村高宏は、現象学的社会学関連の文献研究を軸に障害者に関するケアのあり方について考察を進めるとともに、東日本大震災における哲学的実践とケアの可能性に関するフィールドワークを開始した。分担者近田真美子は、ACT(包括型地域生活支援プログラム)実践のスキルに関する国内外の研究をレビューし、ACT実践に携わっている看護師4名にインタビューを実施した。分担者小林道太郎は、フッサール現象学と看護研究の関係について検討し、看護等の経験を現象学的に捉える準備を行った。 以上の個別研究と並行して、共同で計2回の「ケアの現象学」研究会を開催し、お互いの個別研究について議論することで、共同研究の実を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3か年にわたる研究の初年度である平成24年度において、研究代表者および分担者は各々、看護師やソーシャルワーカーにインタビューを行い、分析を開始したり、ケア経験を現象学的に捉えるための基礎的研究を行ったりすることにより、「ケアの現象学」の「具体的展開」に向けて、着実に研究を進めることができた。また計2回、共同研究会を開催して共同研究の実を深めることもでき、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
各自の個別研究を着実に進めるとともに、2年目である平成25年度は、共同で行う「ケアの現象学」研究会の開催回数を増やし、共同研究の実をより深めることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗に大きく影響するものではなかったが、当初予定していた海外ならびに国内出張数件、および若干の物品購入が事情により翌年度に持越しとなったため、当該助成金が生じた。出張、物品購入とも、次年度前半に行われる予定であり、次年度研究費と合わせ、適切に執行がなされる見込みである。
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