研究課題/領域番号 |
24320005
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
松田 純 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30125679)
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研究分担者 |
南山 浩二 成城大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60293586)
天野 ゆかり 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 助教 (60469484)
神馬 幸一 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (60515419)
宮下 修一 静岡大学, 法務研究科, 教授 (80377712)
堂囿 俊彦 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (90396705)
青田 安史 常葉大学, 健康科学部, 准教授 (90551424)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 在宅医療 / 介護 / 専門職倫理 / 倫理と法 / 成年後見 |
研究実績の概要 |
平成26年3月に刊行した『こんなときどうする? 在宅医療と介護 ケースで学ぶ倫理と法』を関係機関や専門職に送付し、授業や研修会等での使用と本書についての意見聴取を依頼した。本書を、理学療法士、看護師、臨床心理士の養成機関や看護教員研修、在宅医療・介護専門職の研修会等で使用し、ケースに基づくグループディスカッションを行い、終了後に、参加者に対して、理解度や倫理的問題への取り組みかたの変化などについてアンケート調査を行った(回収数:224件)。その結果、法制度や倫理の知識について事例検討を通して具体的に理解を深めることができたなどの感想を得て、答えを探すのではなく考え方を重視するという本書の教育効果を確認できた。 9月20日に公開シンポジウム「在宅医療と介護の倫理と法 専門職の資質向上のために」を開催した。在宅医療と介護に関わる専門職と養成機関の教員など約50名が参加し、専門職の倫理的・法的対応力の向上のための教育や研修のあり方などについて討論し、上記のアンケート調査結果の報告もふまえ、求められる倫理教育の課題と本書を用いた有効な教育方法について有意義な意見交換ができた。 第26回日本生命倫理学会年次大会でシンポジウム「在宅医療と介護の倫理と法―地域医療をどう支えるか」を主催し、関連分野の研究者・専門職と倫理的・法的教育の重要性と課題について認識を共有できた。 中華人民共和国や大韓民国における成年後見制度をめぐる国際シンポジウムや、東海北陸理学療法学術大会など各種学会で研究成果を発表した。「自分と家族の生き方講座」で研究者3名が、市民に対して、在宅医療と介護の現状と倫理的・法的課題などについてわかりやすく講演し、問題意識の共有に努めた。 引き続き、認知症のケアの倫理と法を中心としたケースブックの作製に取り組み、ケースの収集と物語化の作業を進め、刊行のめどをつけつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおり刊行できたケースブックの普及に努め、研究者や専門職にケースブックが受け入れられてきた。シンポジウムを開催して、この分野の倫理的・法的課題について研究者や現場の専門職と意見交換ができ、問題意識を共有できた。 国際シンポジウムや各種学会で研究成果を発表し、市民向けの講座でも啓発活動に努め、課題の共有にも貢献できた。 第2のケースブックの作製もおおむね順調に進展し、刊行のめどを立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
第2のケースブックの編集作業を進め、平成27年度中の刊行をめざす。認知症の問題が大きな課題となってきていることから、在宅および医療・介護施設における認知症のケアの倫理と法の問題に、関連職種と連携して取り組み、研究成果を関連学会等に発表していく。 認知症に対する正しい理解に基づいて、地域の多様な力を結集して「認知症にやさしい地域」を作りあげるために、専門職にはどのような倫理的・法的対応力が求められるかを明らかにする。 認知症は意思決定の担い手に関する複雑な問題を投げかけ、生命倫理学の中心的テーゼである自己決定原則は、認知症への対応のなかで壁にぶつかる。本人の希望に寄り添うケアと意思形成の支援を模索し、現代生命倫理学に対して新たな方向性を提起していきたい。 身の回りの世話をする親族のいない認知症高齢者が増加していくため、成年後見人等の役割がきわめて重要になってきた。現在の法制度の問題や後見人等の担い手不足などの問題を検討し、必要とされる適切な支援を法制度の面からも保障する体制について検討する。 外国人介護士の増加などで生じる多文化間ケアや、医療・介護分野へのロボットの導入などで予想される倫理的・法的問題の検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の検証のため、各専門職から意見を聴取して、まとめの作業中であるが、年度末に日程調整が困難となり、4月以降にずれ込まざるをえないため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
総括のための研究会を次年度に開催するため、そのための会場費や旅費、謝金等に充当する。
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