研究課題/領域番号 |
24320006
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
越智 貢 広島大学, 文学研究科, 教授 (00152512)
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研究分担者 |
加藤 尚武 人間総合科学大学, 人間科学部, 客員教授 (10011305)
山内 廣隆 広島大学, 文学研究科, 教授 (20239841)
岡野 治子 清泉女子大学, キリスト教文化研究所, 研究員 (50204003)
松井 富美男 広島大学, 文学研究科, 教授 (60209484)
後藤 弘志 広島大学, 文学研究科, 教授 (90351931)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 倫理学原論・各論 / 「和解」概念の展開 / 平和 / 応用倫理学 |
研究概要 |
平成24年度は、「和解」概念の精緻化に向けて、生命・教育・環境・政治・社会の領域毎に理論研究を進め、共同の研究会を開催した。まず、共同研究発表会・討論会として、「広島大学応用倫理学プロジェクト研究センター例会」(第13回:平成24年9月23日/第14回:平成25年2月23日)を開催した。第13回例会では、代表者の越智が「和解」研究で共通の鍵概念である「平和」について応用倫理学的視点から論及し、桐原がユルゲン・ヒュレンの『人間学の基本構造としての疎外と和解』を手がかりに宗教的・神学的側面から「和解」概念の起源を探り、杉田が戦後ドイツ思想、とりわけリヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカーの思想研究を通して政治哲学の領域から、「和解」のあり方を探求した。また、レオ・シュトラウス研究の第一人者であるシカゴ大学のネイサン・タルコフ教授の招待講演を行い、シュトラウス思想を理解する上で重要であるリベラリズムや平和実現のための政治哲学の役割等について全体討論をおこなった,第14回例会では、宇野が西田哲学を通して、「和解」概念を探求する上で重要となる「個と普遍の問題」について探求し、濱井がケベック州における文化的差異の問題に関して州の方向性の規定を図ったチャールズ・テイラーの理論を日本の沖縄基地問題に適用することでその解決の糸口を探る試みを行った。この回も、へ一ゲル研究の第一人者として知られるドイツミュンスター大学のルートヴィヒ・ジープ教授の招待講演を行った。内容は、現代の応用倫理学におけるヘーゲル哲学の役割について、とりわけ「自由」「社会的アイデンティティ」「精神と自然」 の観点から論究するものであった。 以上の発表・討論を含めた各領域での研究成果は、研究雑誌『ぷらくしす』において公刊した。本年度の研究活動を通じて、和解・平和を実現するための現実的な手立てが各応用倫理学領域から追求されたものといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二度の研究会(第13、14回広島大学応用倫理学プロジェクト研究センター例会)を行うことによって、本年度の目標であった実践場面を想定した〈「和解」概念の精緻化〉を進めることができた。またその研究成果報告書として、三月に雑誌『ぶらくしす』第14号を刊行した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年は、これまで各領域で構想した「和解」概念と「平和」構築のパラダイムを、実践面での適用可能性を含めて協議し、総合的なビジョンを構築することになる。この目的を遂行するため、二度にわたる研究会(広島大学応用倫理学プロジェクト研究センター例会)を計画している。その研究会において、生命・教育・環境・政治・社会・情報の領域ごとに〈「和解」概念の総合〉をめざす。それとともに、「和解」概念を実践面に適用する可能性を協議するつもりである。また来年度は、研究会においてドイツからイエナ大学のクリストフ・ハルビッヒ教授の招待講演を開催し、「和解」に向けた実践倫理の枠組みを検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、タルコフ教授とジープ教授に加え、ミュンスター大学のミヒャエル・クヴァンテ教授を招き、講演と討論会を開催する予定であった。しかし、クヴァンテ教授が24年度ならびに25年度は多忙のため、26年度にしてほしいという要望があり、基金の一部を25年度にまわすことになった。したがって、この額はさらに26年度に繰り越すことを予定している。25年度の予定額については現在のところ、計画通りに使用する予定である。
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