研究課題/領域番号 |
24320007
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
御子柴 善之 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20339625)
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研究分担者 |
寺田 俊郎 上智大学, 文学部, 教授 (00339574)
舟場 保之 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (20379217)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 人権 / カント / グローバル化 / 世界市民 / 理性 / 国籍 / 普遍主義 / 尊厳 |
研究概要 |
平成24年度における本研究活動の中心は、8月24日に予定通り第6回日独倫理学コロキウムを開催したことである(会場:ドイツ連邦共和国のボンにある早稲田大学ボン・オフィス)。それに先んじて、8月4日に準備会、10月27日と12月15日にコロキウムの反省会と第7回日独倫理学コロキウムに向けた準備会を開催した。第6回コロキウムでは、「グローバル化時代の人権」という表題の下、6本の研究発表が行われた。いずれもドイツ語か英語で行われたが、ここには邦訳を記す。「カントの『方法の逆説』と人権」(御子柴善之)、「市民にならないと、人権はないのだろうか」(アンドレアス・ニーダーベルガー)、「人道的介入と人権一グローバリゼーションの観点から」(舟場保之)、「討議倫理の特殊地位」(ヴォルフガング・クールマン)、「人格の尊厳を媒介するものとしての人権」(寺田俊郎)、「人権とその課題一政治のグローバル化によって何がもたらされるか」(マティアス・ルッツ=バッハマン)。いずれの発表もそれぞれの仕方で人権を擁護しようと企図するものだったが、研究目的に即してグローバリゼーションを背景に考えたところに特色がある。議論になったのは、大きく二点である。まず第一に、法・権利を道徳によって根拠づけようと試みることの当否である。これには賛成する参加者と反対する参加者がいた。 第二に、国籍をもつというかたちでしか人権は保障されないのか、という問題である。これには賛成する参加者が多かったが、この考え方でグローバリゼーションに対応できるのかが問題となった。特に、セイラ・ベンハビブの「実践的反復」という概念が話題になったが、インクルージョンを志向するこの概念によって、歴史的背景に基づいて日本社会で生活する在日朝鮮・韓国人の人権問題について、どのような視点を提供できるのかが課題として残った。なお、人権問題の中心を参政権に見るのか、20世紀的人権といわれる社会権に見るのかという、緊急に整理されるべき問題も明らかになった。 本年度の研究は、予定通りに遂行されたと言ってよい。第7回コロキウムの開催地を日本からドイツに変更せざるを得なかったが、そのための準備もすでに進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度については(1)と評価することも可能であるが、ドイツ人参加者の都合により、平成25年度に日本で開催することを予定していた日独倫理学コロキウムを平成26年度に延期せざるを得なくなったのが、(2)とした理由である。平成25年度のコロキウムはドイツで開催する。 グローバリゼーションに定位して、哲学的に人権概念を問い直すという営みは、順調に進展しており、さらなる発展が期待できる状態にある.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には日本(早稲田大学)で第7回日独倫理学コロキウムを開催する予定だったが、それを翌年度に延期し、同年度にはドイツでコロキウムを開催する。二年目は、哲学的人権概念のいっそうの彫琢を目指すとともに、日本とEUのそれぞれがもっている人権問題を視野に入れて議論を深める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の使用計画はほとんど前年度と同じである。ただし、11月23日に早稲田大学で開催される日本カント協会第38回学会のシンポジウムは、本研究とテーマが重なるので、共催とし、シンポジストに講演料と交通費を支出する予定である。前年度と同じく、今年度も何ほどかの金額を翌年に残すことが予想されるが、それは平成26年度に日本でコロキウムを開催するための資金を残しておくためである。
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